アメリカの友人 デジタルニューマスター版 [DVD]
「ベルリン天使の詩」や「パリ・テキサス」とはまた違う秀逸な作品。ストーリーははっきりしており、映像、音楽ともにきれいで、ヴェンダース作品の中でも完成度が高いとおもいます。ただし、やや難解。前2作のような柔い内容ではなく、なんだか硬派な感じ。やや暗い内容。
ヴェンダースは、原作のパトリシア・ハイスミスに猛烈にアタックした結果、なんとかこの作品の映画化権を獲得したということですが、いやはや、デニス・ホッパーが強烈な個性を光らせており、それをみるだけでも面白い映画になっています。題名の「アメリカの友人」はあまり全体の内容を表しているとは思えないですが、それはともかく何度見ても楽しめるという不思議な映画です。中身が濃く、とても速くリズミカルにカットや場面が変わるので、脳みそをかなり集中して見ないといけないような感じ。特に、出だしのところはストーリーを追うのが難しいですが、めげずにどうぞ。ブルーノ・ガンツもいい味出してます。
ベルリン・天使の詩 オリジナル・サウンドトラック
映画ベルリン・天使の詩を見られた方の多くは、サウンドがこの映画のクオリティをより高めていることにお気づきだと思う。残念なのは、この傑作CDが廃盤なのか中古でしか手に入りにくいことだ。しかも日本版はかなりの値段。値段で悩んでおられる方は、「Wings Of Desire (1987 Film) [Soundtrack, Import, From US]」とアマゾンで検索して輸入版を購入されるのがよいかもしれない。1000円程度で購入することができます。
私は、あの天使が恋する女性がトレーラーハウスの中でかけるNick Cave & The Bad Seedsのレコード(14曲目:The Carny)のかっこよさにすっかり魅了されてしまいました。なんとも禍々しいというか閉塞感たっぷりのサウンド。映画ラストのライヴのシーンに再び、彼らの曲(18曲目:From her To eternity)が流れます。
歌だけでなく、映画に登場する詩もあの低音ボイスで収録されていたり、チェロによる陰鬱なメロディなど、せつなく暗いサウンドが心にしっとり沁みてくる素晴らしいサントラです。
ベルリン・天使の詩 デジタルニューマスター版 [DVD]
一見難解に見えますが、よく観ると、人間味溢れる、美しくシンプルなメッセージをもった作品です。
「自分だけ恵まれていない」とか、「生きているのがつまらない」と感じている方にお薦めします。ささやかな希望を優しく心に吹きこんで、「生きていること」の美しさを肯定してくれると思います。
作品の意図は、たとえば、劇中のひとつの台詞に象徴されます。かつて天使から人間に転向した人物が、いまだ天使である主人公に、「人間はいいぞ。君も人間になれよ」と語りかけるシーンです。
つまり、死も痛みも哀しみも感じずに済む(天使は不老不死という設定)天使に較べ、人間は不条理や悲しみも甘受せねばならないリアルな世界に生きています。しかし、幸せであれ不幸であれ、「生きて」いるということの“奇跡”に対する純粋な歓びは、無限の時間を保証され、ただ人間界の出来事を超越的な立場から記録するだけの天使には味わえません。
そのことに気付いた一人の天使は永遠の生を捨て、敢えて、不条理や悲しみの手触りを求め、リアルな生へ、有限な生へと惹かれていきます。天使も人間になってしまえば、天使だった時のように全てが手に取るように分かるわけではないけれど、不運も歓びも一つひとつ自分の五感でリアルに感じ取っていくことに、まさに生きることの醍醐味がある。そんな人間讃歌の温かいメッセージを感じます。
誰かと一緒に見る際の面白みの一つは、天使と人間の対比が、どのようなものの比喩として描かれているのかを読み解いてみることではないかと思います。十人十色の解釈が出来る楽しい映画ではないでしょうか。
時の翼にのって/ファラウェイ・ソー・クロース!<デラックス版> [DVD]
見終わった後、悲しい気持ちと、これで良かったのかも・・・という、不思議な気持ちになりました。前作といわれる「ベルリン天使の詩」とは一見対照的であるけれど、誰かを心から愛しく思う気持ちを表現している部分は同じだと思います。不完全ながらも、一生懸命に生きようとしている人間や天使が愛しく思えます。とても素敵な映画です。
ベルリン・天使の詩【字幕ワイド版】 [VHS]
喧騒のなか、僕が”当時男子校であった”仙台二高に電車で通っていた頃、一見してシスターとわかる女性の、あきらかに意識のトビラを閉ざして座席にいる姿が妙に気に掛かり、しばし眺め続けていたことがある。
『きっとこの人たちは尊い意思を持って奉仕されているのだろう』とは思う一方、俗世間でのいろいろにこのように心を閉ざすことが果たして神の御意思なのだろうかと疑問に思った。もっと世間に降りてきて傷つき、泣き、わめき、笑い、汗をかき、悩み、泥のように眠り、歌を歌い、そんな中で信仰も深まっていくのではないのかなあと妙に気になり、そんなことを感じていた。
この映画は、人生のあるディテールを知りすぎてしまい、却って動けなくなってしまった世の中のおおぜいの主人公たち【わたしたち】に穏やかに、しかし確信をともなった勇気を運んでくれる。僕にとって当時のできごとと完全に重なって映りました。よい作品です。
このレビューが2002/10/10に掲載されその後スクラッチ書込みでいたずらされており、ひどく嫌な思いを致しました。犯人は反省してくれ。するわけ無いか‥