うちにかえろう~Free Flowers~
川上三枝子さんは未映子と名前をかえて、「瞳バイブレーション」「はつ恋」などの新曲を出してますよ。つい最近も「夢みる機械」というアルバムCDが出たばかりです。
この「うちにかえろう」のジャングル・ブギーなんかもエネルギッシュでよかったですが、新作はバラード調の違った魅力でいい感じなんで、おたけさんもぜひ聴いてみてくださいね。
乳と卵(らん) (文春文庫)
貧しい母子家庭に育ち、生まれ生きることに後ろめたさを感じ、自分が子供を産める大人の女になることを恐れる少女、大阪の品なき京橋のスナックで懸命に働き、豊胸手術に生きる因(よすが)を求める母、二人の互いへの愛情と切なき極限の魂の邂逅の物語です。
小学生の緑子は著者自身の代弁(表現)者であり、本書は著者が描かずにはいられなかった少女期の自分自身へのレクイエムだと感じました。芥川賞の名に恥じない、自身を表現し人間存在の核心に迫った素晴らしい親娘の物語だと思います。
〜以下、著者の日記「そら頭はでかいです、世界がすこんと入ります」から抜粋〜
「私は子供の頃、生まれてきたことがなぜか後ろめたくて、わけが判らなくて、なぜ毎日はこんななのに、いつかみんな死んでしまうのに、いくら働いたってお母さんはちっとも楽にならんのに、なんで3人も子供を生んで、朝も夜も毎日働いて、みんな死んでしまうのに、悲しいことの方が多いのに、お母さんはそれでいいの。しんどくないの。そんな風に感じていた」
「表現する人はすごいなどと、なんでかいつの間にかそういう馬鹿げた話になっているわけだけど、表現というのは実はほんとうは滑稽で恥ずかしいものだ。表現者というのは大きな声を出してみたり、反抗してみたり、ここに居ますと叫ばなければ、そこに黙って座っていられないどうしようもない種類の人間であって、いわば一番判りやすく欠落した人間であるともいえる」
格差社会が表面化した現在の日本において、貧しさの中、すれ違いながらも互いを思いあう親娘の哀切な物語が芥川賞に選ばれたのは、出版業界や選考委員等々の思惑の域を超えた大いなる意思によるのではないか、ふとそんな気がしました。
夢みる機械
作家としての川上未映子はよく分かりませんが、
これはとても聴きごたえのある、良いアルバムです。
歌声には芯の強さを感じます。
聞くたびに味が出てきます。
ケイティー・タンストールが好きな人は
これも好きになると思います。
『悲しみを撃つ手』が素晴らしいです。
小説もいいけど、アルバムをもっと出して欲しい。
パンドラの匣 [DVD]
あっけらかんと呑気な雰囲気もある太宰の戦後学園キャラクター小説よりもグッとクールな感じの映画化作品。
原作は、完成度はさほど高くないけれど、馬鹿馬鹿しくキラキラした魅力の作品だけど、原作をかなり忠実に再現し、かつ『パビリオン山椒魚』の冨永監督と菊地成孔が独創的な味付けをして、簡単には言い難い、余韻が残る作品になってました。
よくもそんなところから集めたな、と思えるほどの多様な分野から集まった大胆なキャストが、本当にはまっている!
17歳に思えない主演・染谷の背伸びした大人ぶり、そして彼を取り囲む窪塚洋介のキラキラした目。仲里依紗のはじけっぷり(ゼブラクイーン前夜の最高の輝きを誇る)、映画初出演の川上未映子の堂々たる大阪女ぶり。そしてふかわりょうの使い方。
主題歌とモノローグのアンサンブル。最後の暗転の余韻。
いつの時代にもある青春のもやもやした時間の断片の中、“悶々”と“キラキラ”とが同居した、他にはない最高にエレガントな気分で映画館を後にできました。