狼たちの午後【字幕版】 [VHS]
恋人の性転換手術費用をかせぐため、強盗に入り立てこもることになった男とその相棒。おかしくもないから笑えない、緊迫というよりは切実、絶望的結末の予想、それでもアル・パチーノの熱演ぶりにはぐいぐい引っ張られました。はじめは、強盗二人はどこから見ても「ゴッド・ファーザー」のコルレオーネ家の次男フレドと三男マイケル(アル・パチーノとジョン・カザール)にしか見えない・・・話題性あるけど、なんというか残念というか面白いというか変な感じ、ゴッド・ファーザーと時期が近いだけにイメージが先にきてしまって兄弟でこんなチンピラになっちまって・・・と。が!しかし、また改めて見てみると、そうでもない!ストーリーに夢中!アル・パチーノのソニがカリスマ的パフォーマンスと意外な人間性で野次馬の一般市民どころか人質の銀行員まで味方につけてしまう、一見かっこいいようで所詮あわれなワンマンショー。そして、ここまでに至る家庭事情やいきさつなんかがわかってくるとますます悲しい。いつしか私も協力的銀行員の一人に・・・。映画「ソード・フィッシュ」でジョン・トラボルタのセリフにこの「狼たちの午後」の話題がありました。これには意味があるので、両方観るとおもしろいでしょう。
狼たちの午後 [Blu-ray]
70年代初頭のニューヨークはブルックリン地区、低所得者層が住むその汚い町の小さな銀行の支店に、ベトナム帰り?の二人(G・カザール扮するサルは、飛行機に乗ったことがないと行っていたが・・・。ベトナムへの兵員輸送は船だったのかな?)が、押し入った。
アル・パチーノ(ソニー)は、一見計画的に見える銀行強盗のリーダーとして、シリアスな演技を見せるが、事件はいろいろなハプニングやエピソードを交えてリアルタイムに進行するので、(時にはユーモアさえ漂う優れた脚本に支えられて)快演している。
DVDで見たのはかなり前のことなので単純比較はできないが、今回のBD化で、かなり映像はクリアになっていると思う。もちろん古い映画のこと、粒子の粗い部分も目につくが、エアコンの切れた蒸し暑い店内での緊張感に満ちたやりとりなど、かなり臨場感に満ちている。
特に、野次馬たちの遠回しの場面では、この頃のブルックリンはまだまだ白人が多く住まいしていたのだなぁと、時代を感じたりしたものだ。アフロヘアの若者や黒人などはっきりと識別できるディテールの細かさは、BDならではのものだと思う。
銀行の向かいの理髪店が警察の現場指揮所になるのだが、その入り口ドアの古びた質感や床の汚れ具合まで、しっかり見て取ることができ、リアリティーが感じられるのである。
映画としての評価は言うまでもないが、BDの画面も是非見てほしいものである。
お勧め!!
狼たちの午後 [Blu-ray]
僕がアル・パチーノのファンになる大きなきっかけになった作品。大きなストーリーの展開がほとんどなく、そのほとんどが同じ場所で繰り広げられるストーリーでありながら、観る者を全く飽きさせません。まさに制作者陣と役者陣の努力の結晶という感じがしますが、やはり主役のパチーノの素晴らしさが光ります。全ての感情表現、アクション、表情に至るまで、その絶妙なさじ加減は天才としか言いようがありません。こういう映画を見せられると、やっぱり日本はまだまだ敵わないのかな、と思わされます。話は実話に基づいているようです。真夏の話でありながら撮影は冬だったために工夫したいろん苦労話や、じつはアドリブがうんぬん等の逸話は、見終わってから調べてみると楽しいとおもいます。ゆっくり、どっぷりと浸かって、じっくり味わうべき秀作だとおもいます。これから見てみようという人のために、ストーリー等に関しては触れません。邦題はちょっとどうかと思いますが、直感でこういうの好きだなという方、パチーノが好きな方はぜひ。ちなみに僕にとっては永久保存に値するので、ブルーレイ確保です。びっくりするほどの画質の向上は今のところ感じませんが、僅かでも良くなっていれば僕的にはOK,です。
狼たちの午後 [DVD]
実際に起きた強盗事件をもとに作られたいわゆる実話もの。場面は
ほとんど銀行内部とその前の広場に限られているので、ゴージャス
なセットは必要ない。よって制作費はおそらくパチーノとカザール、
その他の役者さんプラス、エキストラの出演料が主では、なんて考
えちゃった。余計なお世話。
さて、この映画の見所はなんといってもパチーノ(若い。パチーノ
の息子さん?)とカザールのボケとツッコミ演技合戦。30代で、
もはや髪がかなり苦しいカザールの、最初から呆然自失したような
有様と、なんだか落ち着きのないパチーノを見ただけで、こりゃ
駄目そうとすぐ分かる。そこにホモセクシュアル問題、刑務所の暴
動、野次馬心理などを巧みに絡ませてなかなか見せる。
その展開のうまさと並んで是非見て欲しいのはパチーノのボデイラ
ンゲージ。90年代は特に火を吹きそうな熱演型俳優、という評価が
固まった感のある彼だけど、この映画では、群集にアジルときのハ
ンカチの振り方とか、薄い黄色(だったかな?)のシャツの着方と
か、ちょっとした目配り、足の運びとかに、彼の抑制された繊細な
表現力を見ることができる。女優のメリル・ストリープもこの映画
のアルが好き、といっていたっけ。私はどっちにしろ好きだけどね。
ジョン・カザール、得がたい役者さんだったのに。今更ながら合掌。
狼たちの午後 [VHS]
邦題「狼たちの午後」は原題に忠実に「犬どもの~」とした方が良かったのに。その方がこの負け犬たちの悪あがきが伝わるでしょうに。アル・パチーノの活きの良い名演が堪能できますが、相棒の危ない神経質男・サルを演じる故・ジョン・カザールの名演がこの作品のキモとなっている。何と言うんでしたっけ? ハイジャック犯と人質達が奇妙な連帯感を持ってしまう心理現象-それが本作ではうまく描かれています。実際の事件がモデルだけにその辺りリアルです。主人公がヤジ馬達に向かって「アテッカ! アテッカ!」と煽り立て、シュプレヒコールが巻き起こるシーンがありますが、これはアッテカ刑務所の暴動事件で、官権の行き過ぎた鎮圧により多くの犠牲が出た実際の事件に由来している。つまり「お前ら権力はまた俺たちをブチ殺したいんだろう!?」と訴えている訳です。ヤジ馬たちが共感するのも何ともアメリカ的。同様に突然の非日常にうかれ高揚する心理を見事に演じる人質役のバイプレイヤーたち、リアルだけにその懸命さが何か可笑しい交渉役の刑事、ラストをしめる刑事役のランス・ヘンリクセンの冷徹な演技も見物。主人公の汗が滲んだシャツ、他のレビュアーが指摘しているが、まさに舌をだらりと出してあえいでいる様な、熱い暑い映画です。