論理学入門―推論のセンスとテクニックのために (NHKブックス)
大学1年生くらいでいう「概論」の範囲は"かなり"超えていると思われます。つまり、これは入門書ではありません。
なので、論理学についてすでにある程度の知識があるととても明快な内容になるかと。
この本の有益なところは、論理学の重要箇所について興味深い議論をピックアップして説明しているところですね。目的に応じて「何が」「どのような制限のもとで」論じられるべきか、という点に関して、興味深いことを示唆してくれます。
著者の個人的な意見は多少過激ですが、論理学を使って何かしたい、考えたい、という方にはもってこいの良著だと思います。
数学ガール/ゲーデルの不完全性定理
「数学ガール」三作目です。
今回の大テーマは、ゲーデルの不完全性定理です。
ゲーデルの不完全性定理は、数学より論理学的側面が強いように思われます。
論理も数学の一分野ではあるのですが、他の分野とは一線を画しているというのが私の感想です。
論理学の特徴としては、「抽象的」 ということです。もちろん悪い意味ではありません。具体的な事柄を排除して、全体を眺めているのです。
ですから、これまで微分・積分などの具体的に計算する数学をやってきた私としては、読むのにかなり頭を使いました。
でも、それが楽しくもありました。頭の体操〈第1集〉パズル・クイズで脳ミソを鍛えよう (光文社文庫)のように、パズル感覚でとても楽しかったです。
ゲーデルの不完全性定理の証明の流れを見ることができます。最後の方はかなり難しかったです。私もすべては理解できていません。ただ、おおよその流れはわかったように思います。無知の無知(byソクラテス)になっていないことを願います(笑)。
今言った「無知の無知」。つまり「分かっていない、ということを分かっていない」というメタ視点の考え方が、この定理の理解には不可欠です!
そして感動したのが、ゲーデルの不完全性定理の解釈です。
名前だけ見ると「不完全」とあるようにどこかネガティブな感じを受けないでもありません。
しかし、この定理によって証明されることもあるのです。
「ゲーデルの不完全性定理はね、数学の不完全さを示してくれたのよ。分からないことだってあるの」
「へ−、そーなのかー」
という会話がけっこうされているんじゃないでしょうか。少なくとも私はこのような会話を聞いたことがあります。
というか私自身、ゲーデルの不完全性定理を否定的なものと考えていましたから、人のことは言えませんが(汗)。
それでも、この定理には、何かを証明できるという、前向きでポジティブな面もあるのだということを、ぜひ皆さんにも知ってもらいたいです。
このような解釈をした結城先生には脱帽します。
この本で、大切なことに気付くことができたように思います。
みなさんも、興味があったらぜひご一読を。
ありがとうございました。それではっ!
数学ガール/フェルマーの最終定理
この本はフェルマーの最終定理をサブタイトルに持ってきていますが、フェルマーの最終定理を完全に解説する本ではありません。
でも、そこに至る道のりが、程よい難易度で提示されています。
本格的にフェルマーの最終定理を勉強したい人は、この本でウォーミングアップして、より専門的な本に挑めばいいと思います。
群とか環とか体とかは、数学の教科書では、冒頭でいきなり出現するものだから、どうもいままでしっくりとなじめない感じがありました。
この本では、そういった概念がなんで必要なのか、あったほうがいいのか、ということを登場人物たちと一緒に追って行けるところがとてもいいですね。
流石、結城浩氏です。5点。