通勤電車でよむ詩集 (生活人新書)
小説やエッセイは好きでよく読むのですが
詩というものになんとなく敷居の高さを感じていました。
この本は書店勤務の友人にすすめられたのですが、その友人にはほんとうに感謝しています。
詩ってことばの結晶なのですね。
きらきら光る結晶のうつくしさに思わず涙がこぼれることもありました。
編者の
詩を読む態度として必要なのは、その詩を理解しようとか解釈しようとか説明しようというものではなく、
その一篇に、丸裸の心を差し出し、その一篇と踊る用意があるかどうかという、それだけだ。
ということばにも打たれました。
短篇集
クラフト・エヴィング商會の「誰もが何か隠しごとを持っている、私と私の猿以外は」
は、目から鱗が落ちた。これだけでも、作品として独立して出してはどうだろう。
「箱の中の、箱の中の、箱の中の、箱の中には鍵がひとつ」
箱の色、大きさ、写真のぼやけぐあいなど、微妙で、文もさりげない。
" Your inside is out and your outside is in"
猿のmonkeyの、monはフランス語で私のという意味、猿は、私の鍵だという落ちまでつけて、ご苦労さまでした。
自分もこういう作品を作りたいと思いました。
源氏物語九つの変奏 (新潮文庫)
九名の錚々たる作家が、それぞれの解釈で描いた九つの物語のアンソロジーです。
その中には、現代語訳しただけに近いものや、視点を変えたもの、時代も場所も全く変えてしまってそのエキスだけを残したものなど様々です。
それぞれの作家の描く物語は、「源氏物語」をより解りやすく深くしてくれるように思います。
今回、この九編の短編を読んで、一番感じるのは、「源氏物語」の「深さ」です。
これだけいろいろな解釈がなされ、そのテーマを時代を変えても作品にしたくなる魅力があるのでしょう。
更に、「源氏物語」の各巻が、それぞれ単独の短編小説になりうるということを再認識しました。
所収されている作品の中で、最も気に入ったのは、江國香織の「夕顔」です。一見、単純な現代語訳のように見えて、意外な夕顔像を見せてくれました。
その他にも小池昌代の「浮舟」も、視点を変えるとこんな魅力的な小説になるのかと、面白く読むことが出来ました。
どの作品も魅力に溢れた作品ばかりで、外れはありません。
読み応えのある一冊でした。