さまよう刃
前半の父親の怒りの爆発に対し、後半があっさりとしすぎて拍子抜けした。
最後はもっと盛り上がって、読者達の復讐への期待に応えるべきでは・・と思ったとき、気が付いた。
これは、小説ではあるけれど、現実に、いつ誰が同じような目に遭ってもおかしくない悲劇でもあるのだ。
だからこそ、東野氏は、ただのエンターテイメント小説としての物語の大団円を拒否し、
現実にも得てして起こりそうな不完全燃焼のこのラストを持ってきたのではないか。
これは、読み終わって、「ああ面白かった、すかっとした」と
ぱたんと本を閉じてしまえば終わりの勧善懲悪ではない。
もっと読者に考える事を要求している。
あなたなら、この未成年犯罪者をゆるせますか?
さまよう刃 (角川文庫)
最愛の人をこんなかたちで奪われたら、私ならどうするか。
そう思いながら一気に読みました。
恐ろしかった。
哀しかった。
犯人には同情する余地は全くありません。誰かを大切に思うという心が無いからです。
そして、娘を奪われた父親の気持ちは、わかりすぎて痛いです。
私も2人の娘の親だから。たとえ子どもがいなくても、結婚していなくても、
1人でも大切だと思える人がいる人ならば、同じだと思います。
現実には復讐することは出来ないでしょう。
犯人の人権は守られているし、情報は遺族には伝えられないことの方が多いのだから。
だから、せめて小説の中だけでも・・・と思っていたのですが。
殺人に関しては少年法を適用しない、ということは、日本では無理なのでしょうか。
このままならば、小説が現実にいつなってもおかしくないと思ってしまいました。