日本の心を唄う 現代日本歌曲選集 第2集
ヴェルディ・レクイエムの「ラクリモーサ」を独唱した際、あまりの絶唱に女声パート全員が涙を流し歌えなかったという逸話を持つ大歌手柳兼子が、老境に入って録音したレコードのCD版である。日本歌曲史の中に埋もれてしまうかと思われたこの録音が21世紀になっても聴ける。生きててよかった。往年の大歌手が声を失った代わりに到達したのは直接こころにとどく孤高の芸術だった。私も涙と共に聴かずにはいられなかった。遠くから聞こえてくる「いずれの日にか国に帰らん」の一節など、嗚咽とでもいおうか、望郷の一念をここまで歌い上げた歌唱を私は知らない。
科学の世界と心の哲学―心は科学で解明できるか (中公新書)
本書のポイントは2つ。
1.現代の自然科学の成功因をアリストテレス的自然観からデカルトの心身二元論的世界観への転換として捉えること
2.デカルトの心身二元論以来問題とされてきた「心の哲学」の基礎付けの問題を、他ならぬデカルト自身に立ち帰り解消すること
この2点である。前者は(単純化し過ぎだろうという批判はあれど)言い古されてきた話であるが、
後者は際立って斬新である。希代の哲学者達がこの問題故にデカルトを超克することを試みてきたのであるから、
とうの昔にこの問題がデカルト自身の「心身合一論」によって解決されていたという主張は、
たとえば私がwikiに書こうものなら即座に「独自研究」のレッテルを貼られるだろう。
これが遅れて来たデカルト擁護なのか、それとも真の考古学的発見なのかは、真摯な読者の判断に委ねられている。
ただこの本、確かにタイトルにも副題にも偽りナシなのだが、
タイトルに惹かれて手に取ってしまった人は、内容が「ゴツい」と感じること請け合いである。
というのも認知科学の成果ありきの後付けの一般向け哲学的論議ではなく、もろに哲学プロパーの人間が書いた哲学論考だからだ。
むしろこの本が対象としている読者は、最初に挙げたポイントからも明確なとおり
デカルトの心身二元論が提示する哲学的問題系に興味のある人々である。この点は留意されたい。
また、多くのレビュアーによって見過ごされていることであるが、
デカルトが可能にした自然科学という特殊な営為の特徴を平易に論じている点も本書の素晴らしい特徴であろう。
内容の濃密さと議論の明晰さ、主張の説得力には感服である。星5つ。
中山悌一の芸術
今は亡き、中山悌一氏の歌曲集です。
日本では、イタリア式の歌唱法とドイツ式の歌唱法が混在していますが、
中山氏はドイツ式の歌唱法で歌われています。
関西二期会の木川田氏の先生であり、歌唱法は非常によく似ています。
ドイツの演奏会でも、中山氏ほどうまく歌う者はいなかったという
逸話も残されています。
一部録音状態の悪い部分もありますが、歌唱の在り方を研究する者に
とっては、永遠の財産となることでしょう。
デカルト入門 (ちくま新書)
デカルトの入門書としては最良のものだと思います。
何より彼の生い立ちからエピソードまで豊富に盛り込んで
あり全くデカルトを知らない人でもおすすめできます。
デカルトの科学思想、数学思想と哲学思想が密接に
結びついていることを理解できます。『規則』についての
分析は非常に勉強になりました。本書から更にデカルトの
諸著作にダイレクトにすすめることができると思います。