無から出た錆
『無から出た錆』というタイトルは、前作『殺風景』から約二年リリースのなかった期間を「無」、完成した作品を「錆」と自嘲して呼んでいるわけだが、とんでもない、内容の充実ぶりにおどろく。
冒頭の『長い話』は、17歳から22歳の自分をたんたんと振り返る。「あのころはよかった」という感慨にふけるでもなく、嫌な記憶を封印するでもなく、とにかく前へ進むためだ。
『景色』では、「なにかがしたいんだ」という、もどかしくも力強い叫びが胸にひびく。
『雨』では、ときに優しく包みこむ雨になり、ときに雨を防ぐ傘になり、「君」に寄りそい思いやる気持ちが静かに伝わる。
『風のひこうき』は、井上陽水の『紙飛行機』への目配せも感じられるが、陽水の、風にあおられあやうい紙飛行機とはことなり、周囲の人々の期待や夢を風として受けとめて、自分なりの軌道を描いてゆっくりと飛ぶ「風のひこうき」のイメージが美しい。
彼女は、フォークソング好きを宣言し、陽水や吉田拓郎、泉谷しげる、遠藤賢司への敬愛を表明して、はばからない。たしかに彼らの最良の部分を受け継いでいるとも言えるわけだが、それでいてなおかつ新鮮だ。
歌うとき、自分自身は「無」となって、歌詞の言葉自体、楽曲自体が語りだすようにしたいと彼女は言う。すばらしくみちあふれる「無」である。
ドラえもん 映画主題歌集+挿入歌
初期から中期にかけての、映画ドラえもんを支えた影の立役者と言えば
間違いなく、武田鉄也さんと海援隊の楽曲です。
そのどれもが、映画の感動にすっと溶け込むような、深い余韻を
与えてくれる名曲ばかりです。決して時流に媚びることなく、静かに
時には力強く、作品に寄り添うような暖かさを持っています。
ドラえもんの映画はエンドロールの曲を含めて、
一つの作品であったことを今になって強く感じています。
映画30周年記念企画 ドラえもん映画主題歌大全集と合わせて、
彼らのドラえもんに対する愛情、懐の深さを感じてください。
きっと、あなたと彼らのなかの銀河がふれあう音が聞こえます。
子象物語 [VHS]
いのちの重さを伝えるための作品としては、
私はこの「子象物語」が一番だと思っております。
舞台は太平洋戦争時、東京にある富士見動物園。
動物園非常処置要綱から子象のハナ子を助けるために、
主人公である象の飼育係の正太(武田鉄矢)を始め、
ピアニストの幸子(遥くらら)等楽団のメンバーが協力し、
グランドピアノの入れ物を装った木箱にハナ子を入れて列車に乗せ、
ハナ子を引取る約束をしてくれた長野動物園に何とか送ろうとしますが・・・。
また、正太の幼馴染みの秋元少佐(永島敏行)が動物園の動物を処置する側
として登場するのも、戦争というものの残酷さの象徴となっています。
とにかく、今現在としてはビデオでしか鑑賞できません。
動物園非常処置要綱が取り上げられた作品は他にもありますが、
私はこの「子象物語」を一番に推します。
是非DVD化される事を期待します。
日本でいちばん大切にしたい会社
日本でいちばん大切にしたい会社
「日本にはこんなすばらしい企業があったのか!」
思わずそう唸ってしまいそうな、5つの会社を紹介してくれる。
そのうちの1社である、中村ブレイス工業はカンブリア宮殿でも取り上げられていたので、ご存じの方も多いかもしれない。
一般的に、大きく賞賛され、取り上げられるのは売上高や営業利益が高い企業や、業界で独占的地位を得ている企業がほとんど。
そんな資本至上主義的なものの見方とは一線を画した取材を続け、常に「よい経営のありかた」を全国で説いてまわっている著者が。特別感銘を受けた企業をいくつか紹介しているわけである。
特に涙がでるほど感動したのは、本書で一番はじめに取り上げられている日本理化学工業である。
まず驚きなのが、社員の7割が何らかの障害を持っている人々からなっていることである。
まだひとりの障害者も採用していなかった当時、ある障害者たちが職場体験にやってきた。
まわりがフォローしつづけて、ようやくその期間を終えたわけであるが、最後の日に社員全員が集まって社長に訴えた。
「どうかあの子をウチで働かせてあげてください!足りない部分は私たち全員でフォローしますから!」そう懇願したのである。
しかし・・・いろいろな考慮要素もあり悩み続けていた社長は、ある住職に相談をした。
そうすると、「幸せ」とは、'@人に愛され'A人の役に立ち'B人に必要とされ'C人に感謝されることからである。しかし、'A'B'Cは仕事をすることでのみ得られる幸せである。
そう告げられ、社長は、「はたらく」喜び・幸せを彼らに知ってもらいたいと考え、採用を決めたのである。
イベントを開いたり、金銭的に支援したりするだけでは根本的には癒されない。
「採用・雇用」という側面から、障害を持った人たちを支えようとしているのである。採用を聞いた障害者のご両親は泣いて喜んだそう。
これこそがまさに本当の地域・社会貢献である。
本書に紹介されている企業の共通点であろう。
しかし、これにとどまらないのがすごいところで、
売上高・営業利益という点でも目を見張るものがある。
「不景気だから」「地方だから」などと、外在的理由で言い訳することなしに、
企業なりの工夫を続け、〇〇年連続増益などの偉業を達成しているのである。
なるほど、毎日テレビCMで流れてくるような大企業も尊敬に値するかもしれない。
しかしながら、あまり目立たなくても、利益をあげながらも素晴らしい社会貢献をしている企業がいくつも存在しているのだ。そのような企業の存在を私たちは忘れてはいけないし、賞賛する態度が必要だと思う。
社会・会社を見る目を変えてくれる、そんな一冊。
映画30周年記念企画 ドラえもん映画主題歌大全集
なかなか素晴らしいアルバムに仕上がっているのではないでしょうか。
特に小泉今日子さんの「風のマジカル」が "ドラえもんのCDとして" 初めて収録されているという事実が素晴らしいです。
これは名盤とされる「DORA THE BEST」でさえも実現不可能だった偉業。
現在権利問題でこの曲収録できないと言われる「のび太の魔界大冒険」のビデオソフトですが、
この事実によって若干ながら、将来的にこの曲が使用された本物の「のび太の魔界大冒険」が家庭で見られるかもしれないという希望を見出すことができました。
致命的な点としてはドラえもんの主題歌といえばこの人!という武田鉄矢さんの曲がひとつも収録されていないことです。
しかしながら武田鉄矢さんの曲は今でも普通に購入可能な他のCDにもたくさん収録されており(しかもある程度まとめて収録されている)、
むしろ武田鉄矢さん以外の曲をまとめて集める方が大変だったといえます(アーティストはバラバラですし、マイナー曲も多いため)
「武田鉄矢さん以外のドラえもん映画主題歌をまとめて購入」という用途としては非常にお勧めの一品です。
(それでも島崎和歌子さんの曲と、mihimaru GTの曲は収録されていません。)
矢沢永吉さん、小泉今日子さん、柴咲コウさん、絢香さん、ゆず、スキマスイッチ、SPEED、等々…
これだけのアーティストが揃って、しかも2枚組みなのに、このお値段というのは凄いんじゃないかと思います。
アルバム「DORA THE BEST」が入手困難な現在(入手できてもプレミア価格)、
このアルバムがお安くドラえもんの主題歌を集められる一番の近道と言えます。
とは言っても、やはり武田鉄矢さんの曲も含め全映画主題歌&挿入歌が収録されているという「真のベストアルバム」の方がよいということに違いはありません。
いつかその「真のベストアルバム」が登場する日まで★5は大事にとっておきます。よって★4つ!