前立腺がんの最新治療―知っていれば安心 診断から治療のすべて (よくわかる最新医学)
前立腺がんの書は多いが、本書は全てのポイントを網羅し、通常は治療までで終わるが本書は第4章「治療後」、第5章「退院後」、第6章「もっと知りたい前立腺がん」と親切に木目細かさが溢れる。特に性機能障害、神経温存術、勃起障害の治療法、リンパ浮腫ケア、代替療法、痛みの除去、緩和ケアの説明もある。PSA検査が普及してきた今、一度は本書のような前立腺がん解説書を読むべきだ。何故ならば、前立腺がんは治療法が多く、患者自身が望む治療法選択が可能で、考える時間があるからだ。治療法も知らずに、担当医師に全てを委ねるのは避けたい。前立腺の場合は、PSA値がグレーゾーンに入り上昇してきて、がんの疑いが濃厚になってからが要注意だ。直腸診、超音波検査を経て、いよいよ針生検で確定診断、「クロ」となってCT、MRI、骨シンチ、そして患者自身が治療法の選択をする。私の場合、PSAが9.14、グリーソンスコアが6、TNM分類がT1c、前立腺体積が28ccであった。大きく分けて全摘除手術か、腹腔鏡下全摘除術か、放射線内部照射療法か、HIFUか、その他最先端治療等々、可能治療法の情報をかなり集めた。結局は小線源療法(Brachytherapy)を希望した。次に病院選びが重要だ。私はお世話になった病院から、希望の病院に替えさせて頂いた。その理解と協力にはこれまでの主治医に大変感謝している。どこの病院も治療実績を見ると、その泌尿器科の得意治療法があり、特色をよく調べた方が良い。病院によっては外科手術だけとか治療法の選択は狭まってしまう。担当医師の技量も心配だ。主治医が外科手術しか知らなければ全摘除手術になる。つまり前立腺がんは患者自身がよく勉強をしておかないと、有事の際に医師から治療法について、「さあ、どうします?」と聞かれて、患者は困ってしまうはずだ。「私は○○治療でお願いしたい」と希望を告げたいものだ。尚、重粒子線や陽子線も有効であると思うが、施設数が極めて限定され難しかった。
福島孝徳とチームプロトン 陽子線が拓く21世紀のがん治療
最近のがん保険には先進医療特約というものがつき始めたことに気づいている方も多いと思う。
保険のきかない高度な医療をするときのためのものだが、がん治療にあっては本書のような粒子線治療を行うときに役に立つ。このような治療をするには300万円ほどかかる場合があるからだ。
本書には「福島孝徳」という名前を冠しているがこれはフラッグ的なもので、中身は民間で初めて陽子線治療施設を作った福島県郡山市の南東北がん陽子線治療センターが舞台となっている。(各患者の実例の箇所でDr福島ののコメントはある)
がん治療といえば、通常外科手術や抗がん剤治療、放射線治療などがある。
もちろんそれらで有効な場合もあるが、デメリットがあったり、どうしても除去できないがん細胞もあったりする。そんなとき、最新の技術が放射線治療の中でも粒子線、ここでは水素原子を使った陽子線を照射する技術が役に立つ。
これまでこうした粒子線を使った治療は官公立の施設しかなかった。
そこでは主に研究目的のために利用も制限されていた。
しかし、南東北がん陽子線治療センターが誕生したことで隣接する総合病院とも連携して様々なタイプのがん治療に対応することができるようになった。
本書ではセンターの立ち上げまでの経緯やその様子から運用、実績、もちろん陽子線治療とは何か、その他の治療との併用、各種がん治療の説明、患者の声、スタッフの紹介などが記されている。