緑色の濁ったお茶あるいは幸福の散歩道 (河出文庫―文芸コレクション)
三島賞受賞作。
難病で下半身を動かせない鱈子さんと、細々と書きものを
している姉の可李子と、定年後ウォーキングを趣味として
いる父の明氏と、メニエル病の持病を持つ母親の弥生さんの
4人家族の日常を淡々と描く。
明氏の癌が見つかり入院することで家族に暗雲が立ち込め、
鱈子さんの不吉な夢で終わるが、それすらも淡々と描かれ
ている不思議な作品。
名前の「さん」の使われ方からすると、さんの付かない
可李子が作者本人と重なっているところのある作品なの
だろうと思う。
個人的に読後感はスッキリという感じではない。
斬る [DVD]
高い美意識を感じる映像に引き込まれた!
雷蔵さまも美しくて申し分ない映画でした。
若い頃の、さわやか好青年も可愛らしいし、
後半の影を背負った慎吾もカッコいい!
でも、でも、でも、最後のあの展開は何?
○○なんてラストがすごくイヤ〜〜!!(涙)
私には武士の生き方が良く分からない。
○○するより他にすることがあると思う。
武士は、○○するように洗脳されてるのかと
むなしく淋しい気持ちになってしまった。
雷蔵さまの美しさが際立つ映画なんですが、
どうしても好きになれない結末だった・・。
江戸役者異聞
誰も憎まず誰も愛さず、わずらわしい人間関係から離れて飄々と、ただ鏡に映る美しい自分の顔に見惚れて時を過ごす。主人公田之助が選んだ孤独は、美の特権意識に支えられています。
しかし彼は難病におかされ、片脚を、両脚を、両腕を次々に失っていく。そんななかで彼がふと回想する家族は、手足が不自由で動くことも出来ず恨みがましい目をした妹と、そんな妹だけに愛情を注いだ両親。「田之助が知っている団欒、田之助がどうにも我慢できなかった、そして向こうもまた田之助を拒んだ家族の団欒というものは、心を寄せ合い肌を寄せ合い、いじましいほどにささやかな温もりに満ちた一種奇形な幸福の図だった。報われぬ者がその無力さを以って守ろうとする最後の、たったひとつの砦、---ひと思いにぶち壊してしまったほうが遥かにましな、情けない、悲しいばかりの場所だったのである」。自分はなぜ「こんな冷たい、誰もいない場所」にたどりついたのか、田之助が淡々と思い巡らす場面が印象的でした。
田之助の役者としての自負と意地と、人間としての孤独と業。江戸という時代の終わりを舞台にして、それがさらりと描かれた名作です。これだけ重い内容なのに、明るくて面白い。