脳のなかの倫理―脳倫理学序説
著者は生命倫理委員会での経験から、神経科学や生物学一般の知識が倫理学に資するところがあるのではないかと考え本書を著したらしい。胚はいつ人間と見なせるのかという中絶などにかかる問題から脳と体のエンハンスメント、自由意志と有責性、脳波からのウソ発見という法が絡む問題へ、そして記憶の不確かさを通して倫理の生得性と普遍性へと、広いトピックを上手く繋げている。
ただ個々の議論は詰めの甘さを感じるところが多い。技術的に可能かどうかと、可能ならどうすべきかという話が明確に区別されていないところさえある。人間はなんだかんだ言って新しい技術と上手くつきあっていくだろうという楽観主義は共感できる。が、上手くつきあうにはどういうルールが必要かという議論にすすむべきところでそれを言うのは的が外れている。また脳のエンハンスメントは個人の問題だが体のエンハンスメントは集団全体に影響を与えるからダメだと言うのだが、著者がイメージしているのが脳は認知症などの治療、体のほうはオリンピック選手のドーピングのようなことで、比較できないレベルの話を同列に論じてしまっている。決定論と有責性のところでは「脳は決定論的に働くが、人間は自由に意志決定する事ができる」とか「人と人が関わるときに責任だとか価値観だとかが現れるのであって脳にあるのではない」と言うのだがその理由は論じられていない。好意的に解釈すると、脳の障害が原因だとかの理由で不法行為を免責するのは社会的に不都合があるから自由意志があることにして今まで通り対処しよう、ということかもしれない。でもそれを言うなら神経科学的ないかなる説明も必要ないし、自由意志や決定論の話も必要もなくなってしまう。
倫理学は専門外の神経科学者による、あくまで個人的な意見の披露だと考えればいいのかもしれないが…。
ただ個々の議論は詰めの甘さを感じるところが多い。技術的に可能かどうかと、可能ならどうすべきかという話が明確に区別されていないところさえある。人間はなんだかんだ言って新しい技術と上手くつきあっていくだろうという楽観主義は共感できる。が、上手くつきあうにはどういうルールが必要かという議論にすすむべきところでそれを言うのは的が外れている。また脳のエンハンスメントは個人の問題だが体のエンハンスメントは集団全体に影響を与えるからダメだと言うのだが、著者がイメージしているのが脳は認知症などの治療、体のほうはオリンピック選手のドーピングのようなことで、比較できないレベルの話を同列に論じてしまっている。決定論と有責性のところでは「脳は決定論的に働くが、人間は自由に意志決定する事ができる」とか「人と人が関わるときに責任だとか価値観だとかが現れるのであって脳にあるのではない」と言うのだがその理由は論じられていない。好意的に解釈すると、脳の障害が原因だとかの理由で不法行為を免責するのは社会的に不都合があるから自由意志があることにして今まで通り対処しよう、ということかもしれない。でもそれを言うなら神経科学的ないかなる説明も必要ないし、自由意志や決定論の話も必要もなくなってしまう。
倫理学は専門外の神経科学者による、あくまで個人的な意見の披露だと考えればいいのかもしれないが…。
相互扶助再論 支え合う生命・助け合う社会
ダーウィンは『人間の由来』の中で道徳感情が超自然的な作用で発生するのではなく生物の進化の過程で獲得したものであることを示しました。しかしダーウィンの先駆者そして後継者すらもその事実を認めませんでした。クロポトキンが述べているよう人間優位主義が彼らを盲目にしてしまったのです。
クロポトキンは遺稿である『倫理学』にいたるまで科学的な道徳を追究しました。本書に収録されている4つの論文はその流れにあるものです。クロポトキンは豊富な事例を通して道徳感情が人間特有のものではなく生命に根差したものであることを示しています。その事実は決して「人間を禽獣に堕した」こと意味しません。彼は生命への畏敬に根差した道徳こそ人間本来の道徳であることを示しました。『相互扶助論』が議論の前提となっているので合わせて読んでいただきたいです。
さて本書は訳もよく注釈も充実しているのでクロポトキンの科学観・生命観が理解できると思います。ただ訳者が解説で「3.11」に言及しているのは蛇足とも思えるのですが、相互扶助の意義を理解するうえで有効な一冊です。
クロポトキンは遺稿である『倫理学』にいたるまで科学的な道徳を追究しました。本書に収録されている4つの論文はその流れにあるものです。クロポトキンは豊富な事例を通して道徳感情が人間特有のものではなく生命に根差したものであることを示しています。その事実は決して「人間を禽獣に堕した」こと意味しません。彼は生命への畏敬に根差した道徳こそ人間本来の道徳であることを示しました。『相互扶助論』が議論の前提となっているので合わせて読んでいただきたいです。
さて本書は訳もよく注釈も充実しているのでクロポトキンの科学観・生命観が理解できると思います。ただ訳者が解説で「3.11」に言及しているのは蛇足とも思えるのですが、相互扶助の意義を理解するうえで有効な一冊です。
エシカル ETHICAL オーガニック BERハンドクリーム(ベルガモット) 50ml
ETHICALはこれまでLIPも利用した事がありましたが、ハンドクリームはROSEに続き二本目の購入です。元々肌が弱く、低刺激性のものを好んで使用しております。こちらは香りも優しく、肌にしっとり馴染んでお気に入りです。