地獄絵を旅する: 残酷・餓鬼・病・死体 (別冊太陽 太陽の地図帖 20)
地獄についての入門書としてよく出来ていると思う。ページ数は100ページにも足らないくらいだが、全ページカラーであり、内容の濃さは十分だ。
内容について言えば、『地獄絵を旅する』というタイトルの通り、地獄絵に関する絵を取り上げて解説を附していく形式である。取り上げられている地獄絵は、「地獄草紙」「北野天神縁起絵巻」「勢州来迎寺本六道絵」「餓鬼草紙」「病相紙」「九相図巻」など、多種多様なもので、どれもこれもインパクトがあるものばかりであり、そして描かれているどの絵の鬼もじつに楽しげで、これまた印象的である。
例えば、「地獄草紙」の、生前に他人のものを盗んでうまく逃げおおせた者が堕ちるという「鉄磑所」についての絵の鬼は、邪心がなく、とても楽しそうに罪人たちを臼で挽いており、我々人間からしてみれば、臼で挽かれるという言語を絶するほどの凄惨な場面なはずなのに、鬼の無邪気な笑顔はどことなくユーモアを誘ってしまう。また、「北野天神縁起絵巻」の「黒縄地獄」の絵では、鬼たちは罪人の身体に黒縄で線を引き、それに沿って鉋(かんな)をかけたり、鑿(のみ)を入れたりして切り刻み、燃え盛る炎の中で湯が沸き上がっている鉄の鍋に、罪人を次々と放り込んでいる。そして、やはりこちらでも鬼たちは無邪気な笑顔を浮かべているか、あたかも大工仕事をしているように真剣な顔をしていて、絵を鑑賞している我々にユーモアを誘う。まさしくブラック・ユーモアの極地であると言える。
仏教や、日本文化に興味がある方はもちろんのこと、ダリなどのエロスとタナトスが結びついたシュルレアリスム絵画を好むような方にこそ読んでもらいたいような本である。
内容について言えば、『地獄絵を旅する』というタイトルの通り、地獄絵に関する絵を取り上げて解説を附していく形式である。取り上げられている地獄絵は、「地獄草紙」「北野天神縁起絵巻」「勢州来迎寺本六道絵」「餓鬼草紙」「病相紙」「九相図巻」など、多種多様なもので、どれもこれもインパクトがあるものばかりであり、そして描かれているどの絵の鬼もじつに楽しげで、これまた印象的である。
例えば、「地獄草紙」の、生前に他人のものを盗んでうまく逃げおおせた者が堕ちるという「鉄磑所」についての絵の鬼は、邪心がなく、とても楽しそうに罪人たちを臼で挽いており、我々人間からしてみれば、臼で挽かれるという言語を絶するほどの凄惨な場面なはずなのに、鬼の無邪気な笑顔はどことなくユーモアを誘ってしまう。また、「北野天神縁起絵巻」の「黒縄地獄」の絵では、鬼たちは罪人の身体に黒縄で線を引き、それに沿って鉋(かんな)をかけたり、鑿(のみ)を入れたりして切り刻み、燃え盛る炎の中で湯が沸き上がっている鉄の鍋に、罪人を次々と放り込んでいる。そして、やはりこちらでも鬼たちは無邪気な笑顔を浮かべているか、あたかも大工仕事をしているように真剣な顔をしていて、絵を鑑賞している我々にユーモアを誘う。まさしくブラック・ユーモアの極地であると言える。
仏教や、日本文化に興味がある方はもちろんのこと、ダリなどのエロスとタナトスが結びついたシュルレアリスム絵画を好むような方にこそ読んでもらいたいような本である。