揺れるいのち―赤ちゃんポストからのメッセージ
熊本の赤ちゃんポストが設置された当時、「ポスト」は子捨てを助長すると強く批判されたが、実際のところ、どう運用されているのか。この本は「ポスト」の運用の実態と背景に迫る貴重な一冊だ。
この本によると「ポスト」の機能は「子捨て」助長ではなく、相談業務にある。
つまり親が「ポスト」に子を置こうとするのをきっかけに、悩みを抱える親の相談を関係者が受け、さまざまな情報を提供する。そして、今後、どうすべきかを親に冷静に考えてもらう。これが重要な機能らしい。
「ポスト」に子を置いていく、いわゆる「子捨て」のケースもあるようだが、なぜそうなるか、よく言われる親のモラルの欠如以外の理由もあるらしい。
さらに本書では「赤ちゃんポスト」の背景にある、妊娠、出産、子育てをめぐる困難についても、丁寧に迫っている。
本書を読むと、私たちの社会に何が欠けているのかを、「ポスト」が指し示しててくれている…とすら思えてくる。切ない話だ。
「赤ちゃんポスト」に関心のある方だけでなく、妊娠、出産、子育て一般に関心のある方にもぜひ一読を勧めたい良書である。
江戸の捨て子たち―その肖像 (歴史文化ライブラリー)
なんと江戸時代の津山藩にも赤ちゃんポストが存在した。貧しい農民の子供を育てるお金の無さから来る子育て放棄と、武家の夫婦間に多く起こる不妊の問題を解決するべく、昔の時代にも今と同じ思想は存在した。今では母親の責任と子供の人権のどちらに重きを置くかで倫理観は揺れているが、江戸の人々はそれらをどう考えたのか?今の人にも大きな影響を及ぼすエピソード、捨て子の扱いに今と昔では差はあるのか?考えさせられた作品です。
赤ちゃんの値段
「望まれぬ赤ちゃん」を外国に斡旋するビジネス。密着取材に基づく本書だが、いわゆる「闇ルート」まで明らかにしているわけではない。当たり前だが・・・・
実際、本書が指摘するように養子斡旋ビジネスが日本の現行法ではほぼ野放し状態であることには改めて驚かされる。
血縁を重視する日本とは対照的に、日本の赤ちゃんをコストがかかっても欲しいという米系夫婦。何にでも値段がつく資本主義経済。読んでいて胸が締め付けられるような本。