ピンクヒップガール 桃尻娘 [DVD]
1977年に小説現代新人賞を受賞した作家・橋本治(東大在学中に五月祭ポスターに「とめてくれるな、おっかさん…」というコピーを書いてちょっとした流行語になりました。当時のクソガキは母親に叱られると、判を押したようにこの台詞を吐いていました)の処女作の映画化。好評を呼びシリーズ3作に及びました。本作は1978年の公開。竹田かほりさんと亜湖さん(ともに1958年生まれですからアラフィフですね)のダブル主演。このころから日活ロマンポルノは、従来のエロティック路線からアイドル・女優路線へと次第に変わっていたように思えます。
ストーリーは両女優による裸付きの青春群像劇という感じですが、竹田かほりの小悪魔的でコケティッシュな魅力(死語ですね)と亜湖さんの個性的な演技が何とも瑞々しく、ロマンポルノとはいえそこそこの作品に仕上がっています。原作がしっかりしているのでしょう。脇を固める不気味な雰囲気いっぱいの内田裕也さんと、これまたロマンポルノ界の重鎮・片桐夕子さんの艶めかしい演技が作品に奥行を与えています。冬の北陸の地を友人(亜湖さん)を探し求めて彷徨う竹田かほりさんは、何とも無邪気で守ってあげたい心境にかられます。
いまの若い世代にとってはなんていうことない作品ですが、古き良き日活ロマンポルノを知る意味では、かっこうの入門作です。ちなみに竹田かほりさんはすでに女優を引退、亜湖さんは地道に女優活動を続けておられるようです。
これくしょんシリーズ ジュディ・オング・しんぐるこれくしょん Columbia Years 1966~1972
ジュディ・オングのデビュー曲「星と恋したい」から1972年までのコロンビアから発売した全シングルコレクション。デビュー曲では、若さあふれる素晴らしいファルセットを聴かせる。「バラの花嫁さん」では中国語が所々に入り、日本語との絶妙なバランスでエキゾチックな楽曲と見事マッチした摩訶不思議さで面白い。
1960年代後半ということでGS歌謡路線の曲も多いが、一貫して彼女の歌は一つ一つの言葉がハッキリと聴き取れて、とても聴きやすいしおまけに抜群の歌唱力ときているので文句なし。彼女の若さが前面に出ているが、それにしてもどの作品も素晴らしい。欲を言えば、是非ともオリジナルアルバムの復刻を出来るだけ早い時期に実現してもらいたいものである。珠玉のシングルコレクションに乾杯! ジャケットも最高。
働く理由 99の名言に学ぶシゴト論。
私は海外で起業している。日本出張の帰途の飛行機の中で一気に読了した。
読後感その1:もっと若い頃に読みたかった。
筆者も「はじめに」の中で「『天職を見つけるにはどうしたらよいか』『幸福な人生ってなんだろうか』というようなことを、ひとりで考えていてもうまくいかない。ひとりで考えるのではなく、“人生の先輩たち”と心の中で対話しながら考えてみるといい。」と書いている。
その通りだ。今、私は天職を得て、幸福な人生を送りつつあるが、そう実感できるまでには時間がかかった。外地では有為な助言を与えてくれる方との出会いは物理的に少ない。よって知識、知恵は本から得ることが多かった。学生時代、あるいは海外に出たばかりの頃にこの本に出会っていれば、“人生の先輩たち”たちから貴重な知恵を授かり、もっと早くに天職に出会ったのではないかと夢想する。
読後感その2:この本は、実用的な仕事論ではあるけれども、筆者による良質な幸福論でもある。
筆者は「働くことは、人間が人間であるために、欠くべからざるものであるような気がする。」(P.189)という。もし、働くことの意味が「生活の糧を得るため」だけだったら「ビル・ゲイツやタイガー・ウッズはもう仕事をしないだろう」と。(P.189)
では、「生活の糧を得るため」以外の働く理由とは何だろう?
それを筆者は、関係性の豊かさを築くことであり、それ自体が人間の幸福ではないかと主張する。「つまりそれは、他者との関係そのものを味わうことが、ある種の豊かさの享受を意味するといった価値観だ。これを《関係性の豊かさ》と表現してもいいだろう。」(P.206)仕事を面白く思えていない人、そしてこれから仕事を選択する若い人に読んでもらいたい。この本には天職、そして人生の豊かさ=幸福を得るヒントがたくさんつまっている。
直撃地獄拳 大逆転 [DVD]
「映画秘宝」最新号で“愛すべきニッポンのバカ映画30”と銘打たれたいかにも秘宝的な刺激的特集が組まれているのだけれど、その栄えある“心の1本”としてトップに挙げられているのが今作である(笑)。この映画、実は75年の東映のお正月映画(笑)だったのだが、「新仁義なき戦い」の添え物として製作された典型的B級プログラム・ピクチャーで、「網走番外地」シリーズと言う“表”のヒット作を持つ石井輝男の、もうひとつの顔、即ち「恐怖畸形人間」や「徳川女刑罰史」と言った“裏”のカルト的怪作と並ぶ作品として、コアなファンには堪えられない1本である。これ一応自身が手掛けた「直撃地獄拳」の続編なのだが、更なるシリーズ化され空手映画監督とのレッテルを張られる事を嫌った石井が、どうせやるならとばかりに、ギャング、ヤクザ、エログロナンセンスと自身が得意としてきた猥雑でアナーキーな感覚を破天荒でマンガチックなギャグ路線に転化させて撮り上げたような雰囲気な作品。とにかく全編バカバカしいとした言いようがないギャグがこれでもかとばかり詰め込まれているのには飽きれる事を通り越してそのエネルギーにただただ感心する。例えばどんなギャグ連なのかひとつだけ挙げると、宝の山分けに興じる主演の千葉、佐藤、郷の3人が次第に口論になり、興奮した郷が机の上の瞬間接着剤に左手をつけてしまい、手が取れないため、以後机を手の平の形状に合わせて切断し、それをくっつけたままで(笑)何事もないように過ごしたりすると言うような何ともシュールでクレージーなシーンが延々と続くのだ。真面目派や良識派には決してお薦め出来ないが、趣味人は必見(笑)!
日本仏教史―思想史としてのアプローチ (新潮文庫)
文庫本にしては珍しい仏教史の本です。書き方は、かなり学術的な書き方で、まじめに学究的に書き込まれています。作者の個性というよりは、学問的な書き方になっています。仏教が日本に入り、定着していくにあたって、政治や日本の文化、習俗にどのように受容され、変質を受けたかを知ることで、日本の思想史を見ようとしていて、ユニークな本だと思います。本文の下には、脚注など豊富に載せられています。政治との関係、神道との関係も詳しいです。日本仏教の成り立ちについて、よくわかる入門書になっていると思います。仏教に興味のある人もない人も日本を理解するのに良い本だと思います。硬い本ではありますが、面白い本でした。教養として読む必要のある本だと思います。