人のセックスを笑うな [DVD]
小生は40代後半で、恋愛は昔の話になってしまっています。
この映画を見て、自分が恋をしていた時の思いが蘇ってきました。
ゆりちゃんに逢いたくて逢いたくて、その想いが強すぎて爆発しそうだから、反対に携帯電話に出られないように針金でグルグル巻きにしてしまうみるめの思い。
どうあがいても相手に振り向いてもらえないことを痛感しながら、「みるめくん、あそぼ!」と声を張り上げるえんちゃんの思い。
想像を膨らませれば、奔放な妻を優しく支えることに徹する猪熊さんの思いも。
いずれの思いも自分の恋愛の経験のどこかにあてはまり、切なく、いとおしい気持ちになりました。
恋愛ドラマや映画はたくさんあっても、多くは嘘っぽくて感情移入できませんが、この映画は違いました。
あと、とぼとぼと原付自動車を引いているだけ、イスに座っているだけといった、セリフがない一人芝居のシーンが少なくなく、しかも1シーン1シーンが長かったりするので、退屈に感ずる方もいると思います。
でも、恋に陥ると、かえって人がわからなくなったり、孤独だったりするものではないでしょうか。
セリフのない長いシーンは、孤独感、別の視点で言えば、会っているときだけが恋をしている時間ではないということを思い出させてくれます。
ニキの屈辱
山崎ナオコーラ作品独特の、大袈裟じゃない、生活の流れと心の変化のリンクが好きなのですが、やられました。
振る舞いも感情表現も不器用過ぎる女性若手写真家・ニキが恋愛でどんどんイタくなる女性ならではののめり加減とか、
ニキのアシスタントだった加賀美の、男性ならではの心変わりとか。。。大きな事件がある訳でなく、過ぎていく日常の中ですれ違っていく感じが、ただただ疼くんです。
クイック・ジャパン90
転機となったのは、爆笑問題・田中の登場だったと思う。
それまで、知る人ぞ知るとか、誰も知らないという人選が『QuickJapan』の表紙の特長だったと思う。
しかし、上記の田中登場以降サブカル寄りとはいいつつも比較的メジャーな、表紙買いをさせるような人選になっていって、最近は「ウンナン」「銀魂」など知らない人の方が少数な表紙になっていた。
今号は久々に、「誰?」という表紙だった。
なので、昔の(vol20以前の)号を読んだ時のような興味深さを覚えながら読めた。
「神聖かまってちゃん」が本当に国民的バンドになるのか、それとも時代の徒花なのか、今後は見守って行きたいと思った。
小島慶子インタビューは大変興味深かった。
AMラジオの今現在エース級番組『キラキラ』の今後に、その動向に直結する小島慶子の退職騒動。
心配していた人の多くにとって、安心を得られるインタビューになっているのではないか。
特に小島のAMラジオ復帰を喜び、評価していた伊集院光が感激するような発言もあったと思う。
あとはいつも通り、細かいコラムは全て興味深かった。
他のインタビューも吉田豪のサブカル対談、ゲスト鈴木慶一も良かったし、羽海野チカの『3月のライオン』のインタビューも良かった。
今号は表紙に訴求力がないかもしれないけれど、内容は充実しているので、是非とも読んでもらいたい。
人のセックスを笑うな (河出文庫)
出だしの小鳥の描写、「生温かいものが、宙に浮かぶことが不思議だった」という表現がいいと思ったら、次々に手垢がついていない言葉が現れて、この表現力が最後まで持続する。とてもいい。やや残念なのは話の展開部分と終結部分。大方の読者の予想通り。意表をつく必要はないが、余りにも定石で少し寂しい。・・・と思って併録されている『虫歯と優しさ』を読んだら、感受性と表現力はそのままで話の展開にも思わず唸らされた。素晴らしい。ただしタイトルは『人のセックスを笑うな』が圧倒的! 解説は高橋源一郎。