CITYRAMA
M9"レイモンド"が、映画「富江」のエンディング曲で、それがホラー映画でありながら、どこかファンタジーな雰囲気だった「富江」のイメージを決定付けていました。なので、それ目当てで買った一枚でした。
残念ながら、その映画バージョンとはアレンジ違いでしたが、カジヒデキやポップ・ターツなど曲ごとにゲストを迎えて作られたこのアルバムは、音のびっくり箱のように、かなり自由で良い意味でとっ散らかったアルバムとなっています。このアルバムに制約があるとしたら、無意識の制約すら許しませんといったところでしょうか。それほど、安易にポップだったりする曲がありません。レイモンドは、この中で核と成り得る曲なのに、ものすごくシンプルなアレンジに留め、他の曲との関連性も作っていません。だからトータルとしては、まとまりのないアルバムなんたけど、まとまりのないのが狙いなんだろうという感じです。だから、聴いてよかったとか、そういう重さは皆無です。
そういう自由さを受け入れられるかが、このアルバムを評価できるかに大きく関わってくるでしょう。
ちょっと売れてきた時期だっただけに、僕はこの姿勢は評価します。ただ、ケースが立派なデジパックだったけど、もっと簡素な紙のスリーヴケースとかのが良かった気がします。
羽根
title曲『羽根』は、ピアノ中心の単純な伴奏に声を重ねることに始まり、徐々に音を増やして行くという手法を取っています。安藤希の透き通る声はピアノの音に良く映えますので、この方向は正しいと思います。強いて苦言をということであれば、(特にサビの)アピールが物足りないということでしょうか?C/W曲『花』は、バイオリン中心の伴奏に声を重ねています。title曲と違う形を付けることで変化を持たせることは技巧の良さを感じます。途中からギターの音がアクセントが付いており、音の厚みはtitle曲を上回っています。この歌が彼女のBestソングだと思います。もうひとつのC/W曲『空』は、ピアノ中心の伴奏の曲となっております。title曲と近いですが、いきなりの歌い出さずきちんとピアノソロの前奏があったのと、最初から最後までピアノの伴奏を中心としていることが異なり、かなり落ち着いた曲になっています。この曲も良いと思います。この3曲を聴いて、Gacktの技法に近いなと思いました。そう言えば両方ともレーベルは日本クラウンでしたので、影響を受けたのかもしれません。
伊藤潤二傑作集 富江 1 (コミック)
伊藤潤二さんの恐怖連作短篇から魔性のファム・ファタール「富江」を主人公とした作品を編んだ本です。
伊藤潤二さんのストーリーテラー、そして奇想の優秀さが充分に堪能出来る人気作ですが、初期の富江の正体が良く解らない状態の頃の不気味さとスリルは当時リアルタイムで読んでいて実に楽しみでした。
後半に於いても実は彼女の正体は良く解らないのですがそれでも少しずつ伊藤氏らしいサービス精神で新たな設定が後付けで出来ていく様もそれなりに楽しく、またそれが可能だった所に伊藤氏の漫画家としての高い職能が窺い知れると共に本シリーズが長く続いた要因だと思います。
個人的には、自然界の驚異、「プラナリア」の強い再生力やカタツムリをゾンビ化して操る吸虫「ロイコクロリディウム」を思わせる設定は大いに気に入りました。
こう言う「物」が人間界に紛れ込むと一見サイコパスの様に見えますがその実は全く別、と言う点に人智を超えた邪悪さを強く感じます。
第一話において事故で死んだ富江の死体を先生の指揮の下、男子学生が一糸乱れずに解体して行く様子は現在読んでも悪夢的なユーモアが有り、実に奇妙です。
伊藤氏の作品にその後も現れる恐ろしい群集心理の萌芽を観る事が出来ます。
このあさひコミックの傑作集は大判で読み易くて結構なのですが、初出一覧が無いのは残念でした。
永遠の美少女富江の描き方が年月に因って微妙に変化して行く様を追って見たかったので。
巻末に伊藤潤二氏のあとがきが2頁付いています。
富江 re-birth [VHS]
もともとホラーは苦手な私ですが友人と部屋に集まって無理やり鑑賞会に参加させられました。酒井美紀さんというと綺麗な女優というイメージがありますがホラーがこんなにぴったりはまるとは・・・