飯島敏宏 「ウルトラマン」から「金曜日の妻たちへ」(仮)
バルタン星人の生みの親で、初期の円谷プロの作品(ウルトラマン、ウルトラセブン、怪奇大作戦)を支えたTBSのディレクターというのが、飯島敏宏さんの一般的な認識かもしれない。
しかし、故・実相寺昭雄氏の小説にも出てくるように、実相寺氏がTBSに辞表を出す際に付き添い、その場で社長から木下恵介プロへの出向を命じられる・・・以後、木下プロのプロデューサー・ディレクターとして活躍し、代表作に「金曜日の妻たちへ」などがある・・・詳しい人でも、ここまでがこの飯島氏の一般的な認識だろう。
本書は、幼少時から慶応大学時代の放送研究会でのラジオドラマの執筆、黎明期のTBSでの八面六臂の活躍、そして木下プロでの活躍を主に描き、円谷プロでの活躍には多くの紙面を割いていない。特撮絡みの話を期待した方には、少し肩透かしかもしれない。
また、本書は千束北男というペンネームで書き続けたシナリオライターとして実績、そしてディレタクーとしての華々しい実績というアーチストとしての面と、更にTBSの社員として木下プロに出向し定年を迎えるというサラリーマンとしての人生を全うした稀有な人物の一代記である。飯島氏は、ある意味私が尊敬するサラリーマンプロ(通称サラプロ)として成功した人物だ(因みにもう一人サラプロとしての成功例としては、幻冬舎の社長の見城徹氏も挙げられる)。
木下プロに出向してからの話は、これまであまり語られてこなかったこともあり、非常に新鮮だった。特に巨匠・木下恵介との駆け引き面白いし、巨匠の語られてこなかった一面を浮き彫りにし、大変興味深かった。
今まで誰も書いてこなかった巨匠・飯島敏宏のミッシングリングを埋める貴重なインタビュー集だ。また、捕遺に収録された小説とシナリオは見事だった。千束北男というシナリオライターの才能を見せ付ける素晴らしい資料だった。
実にいい本だ。一読の価値は十分すぎるほどある!
金曜日の妻たちへ DVD-BOX
“不倫”のレッテルゆえに、内容を正当に評価されていない気がします。見なくても分かったつもりになっている人や見たとしてもちゃんと理解していない人が多いのではないでしょうか。
古谷一行といしだあゆみが演じる夫婦が主役なのですが、実際は、小川知子が演じた女性が主役といっていいでしょう。特に彼女とその娘のかかわりは、興味深く感動的です。全体としては、30代後半からの生き方がテーマとなった作品です。“不倫”は材料の一つです。
ただ気になる点が一つあります。DVD版では、重要な場面で流れる音楽が変更されています。ビデオソフトまでは放映時と変更がなかったので、何か権利上の問題が生じたのでしょうか。
放送回数が10回か11回である現在の連続ドラマ(民放)と違って、回数は14回です。当時はドラマの内容次第で、回数が決まっていたからです。放送回数に合わせたドラマ作りをしなくてよかった時代だったのです。
追記
海辺で古谷一行と小川知子が黙ってひたすら手を握り合うシーンは猛烈に切ないです。それと『風に吹かれて』を含め、PPMの歌が何とも言えない魅力を加えています。
金曜日の妻たちへ 男たちよ元気かい? DVD-BOX
不倫ドラマの金字塔『金妻シリーズ』の第2弾です。
古谷一行、いしだあゆみが主演の有名な第1弾と第3弾にサンドイッチされている感の強い本作ですが、男性陣の主演が小西博之なんて今では考えられないマイナー抜擢です。
決して伊武雅刀が主演ではないのですが何故かこのレビューキャスト紹介にはコニタンの存在が抹殺されていて笑えます。しかし'84年放送当時は『週間欽曜日』にもコニタン、本作にもコニタン…と、金曜夜は小西博之オンパレード(笑)でした。
出演者全員個性が出ていて見応えありましたが、今となってはどうしても『金妻』を語るうえでは1作目や3作目(特に3作目はテーマ曲も最も有名な「恋に落ちて」ですし。)に押されがちですが、この2作目こそ1作目や3作目には決して無い甘酸っぱいマイナー臭さがあり、それがたまらなくいいんですよ!
テーマ曲も映画『フットルース』に入ってた『パラダイス~愛のテーマ』をまんま使ってて「著作的にこれでええのん?」て思える感じがまたいいしね。
個人的には1作目や3作目の影にいつまでも隠れていて欲しい(芸能界でいうところのコニタンみたいに)というのがホンネですが、古谷一行が出てる『金妻』以外知らない方に是非観て欲しいという気もします。
『金妻』シリーズはリアルタイムで全部観た…っていう方(今の30代後半~40代の方)はおそらく懐かしさで購入する方も多いのでは?
金曜日の妻たちへIII 恋におちて DVD-BOX
どうも不倫ドラマというイメージが付いて回る作品ですが、改めて見直してみると決してそんなことはありません。
基本的には恋愛ドラマであって不倫に至る過程がきちんと描かれていて必然性があります。
小川知子、いしだあゆみ、篠ひろ子、森山良子がみんな持ち味をうまく出していて演技の掛け合いがとても見事です。
小林明子の主題歌もすばらしく「北の国から」ではないですが、曲とイメージがそのまま重なるドラマは数少ないですがこのドラマはまさにそのひとつです。
最近のドラマにはない「純な恋愛」を体感出来るのでお勧めです。