心療内科に行く前に食事を変えなさい
「成功する人は缶コーヒーを飲まない」を読んで感銘を受け,続けて本書も購入して読んだ。今まで自分が食べ物について何も考えていなかったことを気が付かされ,とても反省している。私がこの本から学んだ点は,次の通りである。
・たとえば,ほうれん草に含まれるビタミンやミネラルは20年前に比べて約半分。にんじんに含まれるビタミンAは3分の1。ほかの多くの野菜も,栄養分よりも見た目や味,香りなどを優先して品種改良した結果,とくにビタミン,ミネラルの量が少なくなってきています。
・血糖値を下げるホルモンはインスリンしかなく,血糖値を上げるホルモンはグルカゴン,アドレナリン,ノルアドレナリン,コルチゾールなど多数備わっていて,飢餓に耐えられるようになっている。
・余った糖質は中性脂肪に変換されて体脂肪となる。
・記憶力に関係するアセチルコリンという神経伝達物質の原料となるのがレシチン。レシチン不足はアセチルコリン不足につながり,物忘れがひどくなりかねない。
・脳に影響を与えるにもかかわらず,血液脳関門を通過できてしまう有害物質は,アルコールと覚醒剤。
・食事由来のコレステロールは,総コレステロールの5分の1程度で,残りの5分の4は,主に肝臓で合成されている。さらに,食事由来のコレステロールが増えたら,肝臓は合成するコレステロールの量を減らして,常に一定になるように調整している。だから,コレステロールを食べても血中コレステロールは上がらない。
・糖質は心身の重要なエネルギー源だが,とりすぎて余った糖質は中性脂肪となり,内臓脂肪として蓄積され,いわゆるメタボリックシンドロームの原因となる。
・一国を滅ぼすのには高度な武器も戦争も必要ありません。その国の食事を,人間の代謝に合わないものにしてしまえば,国民はみな病気になり,国は滅びるのです。
結局,日本という国は,豊かになりすぎて,食事に関してもお金を出せば,何でも手に入るようになった。そうなると,人は安くておいしいもの,手っ取り早いものにどうしても手を出してしまう。それで栄養価が変わらないのならば,ある意味それでも問題ないだろう。しかし,実際にはそれにより日本人の身体は,どんどん蝕まれている。単純に日本人のニーズにあった,糖質を多く含む食品,スナック菓子,菓子パン,カップ麺などのインスタント食品は,それを食べる人の身体だけでなく,精神までをも不健康にしているという事実。そして,最も恐ろしいことは,その現実を多くの日本人が認識していないということである。だから,人々は知らず知らずのうちに,自分の身体や精神が不健康になっていることに気付かない。そして,あるとき,がんが発見されたり,鬱病を患ったりして,不幸に直面する。しかし,そのときに気付いたのでは遅いのである。
極論すれば,今の日本というのは,お金儲け至上主義である。どんなことであれ,お金が儲かれば良い。菓子メーカーは,安くて美味しいものというニーズがあれば,糖分が多かろうと,そのニーズに応える。手軽なものが求められれば,インスタント食品を売る。そして,人が病気になれば,病院は儲かる。薬も売れる。結局,誰も相手の立場になって,物事を考えようとはしない。それは,菓子類やインスタント食品を求める国民にも大きな責任がある。ある意味自業自得と言わざるをえない部分もある。だから,そのような状況に自分が陥らないためにも,本書のような栄養学の本を,もっと多くの日本人が読むべきであると私は考える。
ACP 内科医のための「こころの診かた」 ここから始める!あなたの心療
ER医です。一般外来よりも精神疾患と遭遇する機会は多いのですが、お世辞にも精神科疾患が診れるとは言い難く、また勉強するにも手の着けようがない..という感じでお手上げでした。(これは多くのER医にあてはまると思うのですが..)
思うに、内科医やER医の得意とする身体疾患に対する、仮説演繹法などのアプローチがうまくいかないのがその原因でしょう。DSM-'W-TRの分類は細かすぎてとっつきにくいし。
そのような複雑怪奇な精神疾患の森をMAPSOというシステムで分類、非精神科医にもかなりわかりやすく概説しているのが本書です。各章ごとも内科医やER医にも馴染み深い診断アプローチを採用しているため、ストレスなく読めました。ただ、日常よく経験する解離性障害、適応障害などの項目はなく、もう一歩というところでしょうか。
現在、日本においても身体疾患と精神疾患の共存した患者が多く、内科医が精神疾患もみなくてはいけない、という状況にもなりつつあるのではないかと思います。本書はそのための基盤となりうるものだと思います。
10年物語~All Singles of the decade and more~
「歌声そのものが極めて美しい」という点で、ルクプルは予め強力な魅力を持っていたと言える。藤田恵美は日本のポピュラー界でも間違いなく5指に入る肉声の美しさを持ったシンガーと言って良い。決して声量がある、あるいは声帯が太いタイプのシンガーではないが、彼女のヴォーカルは非常に魅力的で美しい。またその美声で綴るルクプルの楽曲は、例えばユーミンのような鋭い感性に裏打ちされた歌詞でもなければ矢野顕子のような天才的なメロディーやアレンジがなされているわけではなく、例えば「ありがとう」とか「ごめんなさい」といった ごく庶民的な視点で発せられる感情を素直に綴ったものが多い。突飛な楽曲はなく血が騒ぐような楽曲もない。しかしそれこそがルクプルの魅力だった。J-POPの若手シンガーのように根拠もないメッセージを懸命に歌うわけでもなく、ビートやビジュアルで魅せるわけでもない。しかし、だからこそルクプルの音楽には「聴く人を癒す」という魅力が満載だった。
このアルバムはルクプル10年の活動で発表したシングル曲をまとめたベスト盤だが、何とも心落ち着く珠玉の楽曲が並んでいる。藤田恵美の美しい歌声とルクプル独特の素直な曲調に、何度聴いても心が癒される。「ひだまりの詩」「縁は異なもの」といったヒット曲の他にも魅力的で素晴しい楽曲が何と多いことか。解散は残念であったが、この元・夫婦の2人には末永く活動してもらいたいものだ。名曲「Song Of Love」は必聴の一曲。こういうのを本当の“Love Song”と言うのだよ。