やっとかめ探偵団と鬼の栖 (光文社文庫)
現時点で『やっとかめ探偵団』シリーズ最新作。主人公の和製ミス・マープルこと波川まつ尾は、第1作(1988)からずっと74歳なのだが、この「サザエさん状態」は、このシリーズにはちょっと苦しい。
第1作の時点で74歳なら、まつ尾さんは1914(大正3)年生まれ。海千山千なのに可愛らしい魅力的なキャラクター設定は、明治の気骨を残し、大正モダニズムの空気を吸い、激動の昭和を生き抜いたという、絶妙な世代感に支えられていたのではないか。でも、その世代感で通用するのは、第3作『やっとかめ探偵団と殺人魔』(1993)あたりまでだろう。
この『鬼の栖』の単行本発売は2003年、まつ尾さんは1929(昭和4)年生まれになってしまう。あの女傑おばあちゃんが、昭和ヒトケタ生まれ? それは違うよなあ、と思うのは私だけであろうか。
このシリーズは、ユーモア推理小説の白眉であり、できれば続けてほしいが、それには、舞台を1990年前後で固定する必要があるだろう。起きる事件は時事ネタを取り入れるのも特徴だから(『鬼の栖』では児童虐待問題)、時代を固定するのは難しいかもしれないが…。
それと、おばあちゃんたちの名古屋弁が、初期の作品に比べると、ネイティブ度が下がった(標準語に近くなった)ような感じがするけれど、私の気のせいかな。
やっとかめ探偵団と殺人魔 (光文社文庫)
名古屋に住む駄菓子屋のおばあちゃんと、その近所に住む
ばあちゃんたちが活躍するシリーズです。
名古屋弁がたくさん使われていますが、名古屋に縁の無い人でも
大丈夫。ちゃんとおもしろい解説がついています。
本作は連作短編集の形をとっており、それぞれの短編の
謎解きをしていくと、最後に大きな謎がとけるという
シリーズの中でも特によくできている作品です。
楽しいのでぜひご一読を。
やっとかめ探偵団とゴミ袋の死体 (祥伝社文庫)
やっとかめ探偵団といえば、清水義範さんのシリーズもので、これが面白いのだ。
田中雅美さんのあわせて300歳探偵団と並んで、高齢者の探偵モノなのだけれど、推理が日常生活と人生経験に基づいているというところが、よく似ている。
凄惨な事件なので、にやにやしながら読んではいけないのだけれど、そこはまあフィクションだし。
たまにお説教くさいことをいうのが、難点なのだが、この巻ではそれがなかった。
その分、犯人捜しが、簡単だったけれど。