フォーガットン [DVD]
最初からぐいぐいと引き込まれるほどの面白さですが、子供を持っている人達(とくに母親)を主人公としているので、独身者にはつまらない映画のはずです。作者及び監督の着眼点は素晴らしく独創的です。レビューしにくい作品であり、少しでも詳しく書くとネタばれになってしまうので、子持ちの人達にはとにかく見てもらうしかありません。サスペンスに溢れ、迫力もあり、場面展開も早く、最初から終わりまであっという間に見てしまうでしょう。
なぜ、このようなすぐれた映画の評価が低いのか不思議ですが、作る側もやや突っ込み不足というか勉強不足のところがあったように感じます。作品では母性愛の深さと記憶の不確かさの2つが大きなテーマになっています。母性愛については十分表現できており、それが作品の骨格となっていますが、記憶ということについては抽象的にも、具体的にも十分に深い考察がされていません。
記憶は完璧なものではなく、場合によっては薬物等によって部分的に忘却可能であったりします。しかし、他者によって忘却されてしまうということは、その人の人生も奪われてしまうということです。記憶=人生、もっと正確に言うと、愛を中心とした若い溌剌とした時期の記憶=人生だからです。80歳代の人達が2,3日前のことを忘れやすいのに対し、青春時代のことは鮮明に覚えているという現象はよくあります。まして我が子と青春が重なり会えば、人生最高の時期であり、生きるということはそれを記憶しているということであり、忘れてしまうということはすでに死んでいるも同然なのです。主人公に誰でも共感できるのは、まさに我が子ばかりでなく、生命への強い意志です。この映画を見てそうしたことを実感しました。
見かけよりも深みのある作品で、十分に面白いですが、掘り下げ方が足りませんでした。
The Long Forgotten Friend
イリノイ州はシカゴ発、そしてgraveface records主催者であるryan gravefaceことryan manonによるband、dreamendの2nd albumの日本盤。
リリースはhappy princeから4枚目、gravefaceからは28枚目。
元々postrrockやslowcore、shoegazer等といったスタイルで認知されていたけれども、今作ではryan manonのvocalを前面に出して、dream pop、Psychedelicのエッセンスも含んだ、非常にemoな1枚に仕上がっています。
今までのスタイルからの変貌に戸惑うのかもしれませんが、postrock出身で音響的なサウンドや、深遠・悲哀と言った言葉で飾れる雰囲気は、活動を通して貫かれていると思います。
今作の背景には沢山の人間が関わっていて、trk-2,4ではoctopus projectのtoto miranda氏がdrumで、trk-3,9ではkid dakotaのdarren jackson氏がguitarで参加。
また半数の曲のmixを行ったjohn congleton氏は、explosions in the skyやmodest mouse等のmixも手がけてきた人物です。ちなみに日本盤のジャケットの、とても素敵なパッチワークデザインはmichilu sugawara嬢主催のchimeraによるもの。
タイトルの"the long forgotton friend"とは、ryan氏本人の、叔母の事だそうです。