シャムロック「唇のオーシャンブルー ですぅ~」 (GA文庫)
今巻が最終巻です
郵政民営化が騒がれた時期に警察業務の民営化をネタにして始まった本作なだけに、
今回も時事ネタや皮肉がたっぷり
漢字の読めない総理、国際的に恥を晒した酔いどれ大臣、企業献金、etc...
私達の記憶に新しい出来事を作中で絡めながら皮肉るのは、読んでいて小気味いいものでした
また、金や圧権によって政府を操る組織を相手とした勧善懲悪なので更に痛快
裏の裏を斯いた智謀合戦やロボットによる戦い、恋愛に罵り合いなど見る部分もたくさんで、
桂一や簗瀬弟の会話など笑える部分も豊富で、最後の1ページまで余すコトなく楽しめました
非常に満足のゆく最終巻です
郵政社長の人事問題や解散総選挙などネタが数多く転がっているだけに、
このタイミングで完結してしまうコトを惜しまずに居られません
SHAMROCK (通常盤)
ドラマ『ダンドリ。〜Dance☆Drill〜』のエンディングで流れますが、
なんといっても、この疾走感が良いです。
特に、エンディングのチアの映像をバックに聴くと、疾走感がより感じられます。
一瞬、声が変わるパートも、いいポイントになってます。
蛇足ですが、深夜番組だった『ダンドリ娘。』(一足先に終了)では、オープニングタイトルになってました。
シャムロック・ティー (海外文学セレクション)
この人の作品のおもしろいところは、話がどんどん別の方向に逸れていってしまうところだ。聖人の逸話コナン・ドイル、ホームズ、オスカー・ワイルド、ウィトゲンシュタイン、メーテルリンク、ブラウン神父等の数々のキーワードが散りばめられ、それが折かさなり波及し、相乗的に重層的に語られ物語が物語を生み出していくのである。それが眩暈にも似たおもしろさを生み出している。そして、それらの無数のエピソードを束ねるのがタイトルにもなっている『シャムロック・ティー』と神の手を持つ男と称えられたネーデルランド絵画の創始者ヤン・ファン・エイクの最高傑作「アルノルフィーニ夫妻の肖像」なのである。この謎に満ちた象徴的な絵を芯に据え、尚且つそれになんとも奇妙な『シャムロック・ティー』なるものを絡ませることによって、この作者は驚異の摩訶不思議な物語を紡いでゆくのだが、非常に興味深いことに本書の展開は大方の予想を裏切るものとなる。これだけ大上段に構えた素晴らしい仕組みを用意してあるにも関わらず、この作者はそれを多く語らないのである。これはある意味新鮮な感覚だった。脱線していくエピソードの数々がとてもおもしろいものだから、あれよあれよと読まされてしまって、気が付いたらページの残りがとても少なくなっていて最後の最後で作者の仕掛けた仕組みの歯車がよっこらしょと動き出したときにはいったいどういう着地をみせるんだとハラハラしてしまった。もう一つ言及しておきたいのが、数多く語られる聖人たちの殉教の物語である。アイルランドは生粋のカトリック教国でありまして、一年365日毎日がなんらかの聖人の祝日になっているくらいで、何かの守護をしている聖人は無数にいるのである。そんな数多い聖人の殉教の様子が色々語られるのだが、これがやはり凄惨であまりにも残酷なのである。昔の人はすごい時代を生きていたんだなぁと改めて実感した。とまあ、こんな具合に本書は本好きの心をくすぐる本であり、桜庭一樹をして「やっぱりいつかキアラン・カーソンみたいな小説の書き方をしてみたい」と憧れさせる本なのである。