孤独のグルメ 【新装版】
不思議なマンガである。1話8ページ程度の読みきり形式。
主人公である中年男が行く先々で食事をする。筋らしい筋は
ない。グルメ漫画のような、食べ物に対するもっともらしい
説明もない。有名な店にも行かない。また、行列に並ぶよう
なことはしない。街のどこにでもある食堂のありふれた料理
を食べる。豚肉炒めライス、シュウマイ、ハンバーグ・ラン
チ等々。
文字にするとなんともそっけないものだが、何度も読み返
したい気持ちに駆られる。なぜだろうか。
その秘密はタイトルに隠されている気がする。「孤独のグ
ルメ」の響きに寂しげな印象を受けるが、全然そんなことは
ない。むしろ、都会人が享受できる「癒し」なのである。
都会が田舎に比べて長じている点は匿名性と選択の幅である。
自分の存在を消せる町があり、たくさんの食堂がある。
テイクアウトして公園で食べてもいい。自分自身で食事空間
を簡単にコーディネートできる自由を持っているのだ。
お仕着せのない、時間と空間を大切にした食事。それを
夢中で掻きこむところがとても美味そうなのだ。谷口ジロー
の確かな画力がなせる技であるのはいうまでもない。
闇雲に行列に並ぶ人達は本当にグルメなのだろうか。
そもそも、食事とは単に食べるだけの行為ではないように思
う。空間や時間もとても大切な要素である。そして、誰にも
邪魔されない、つかの間の孤独。せわしなく、ほっとかれな
い都会人にとっての貴重なひとときである。
この作品は平成6年から8年にかけてPANJAという雑誌に
連載された。2000年文庫となり、ひっそりと版を重ねている。
花のズボラ飯
こんなに待ちわびた漫画の単行本って生涯一度もなかったかもしれません。
現在(12月22日)在庫切れですが、早く入荷してほしい!
原作者はかの有名な「孤独のグルメ」の久住昌之さんです。
連載時から孤独のグルメファンや漫画好きのあいだで話題沸騰していた本作。
実際に読んでみると・・・100点満点で10000点くらい付けたい面白さです!
主人公は単身赴任中の夫を持つ「花」。
ぶっちゃけこの奥さんが一人飯を作って食べておいそうにしているだけの漫画です。
だがそれがいい。
花の食べる料理は実においそうだし、彼女の一挙一動はめちゃくちゃ可愛いです。
孤独のグルメと大きく違うのは、あちらは定食屋さんに食べに行くのに対し、こっちは基本的に家で「料理を作っている」こと。
彼女の作る料理は料理と呼べないほどのものぐさっぷりですが、一人暮らしの人は大いに参考になるのではないでしょうか。
「天体戦士サンレッド」という漫画で簡単料理のレシピがおまけで載っていましたが、料理のイメージはあれに近いです。
読めば読むほど幸せになれる本作、今年一番満足できた漫画の単行本でした。
老若男女全てにおすすめです。
孤独のグルメ (扶桑社文庫)
モノを食べる時にはね、誰にも邪魔されず
自由で、なんというか救われてなきゃあダメなんだ
独りで静かで豊かで…
このセリフ!まさに期待通りの久住昌之。
私は「芸能グルメストーカー」から流れ込むようにこの作品に触れた口なのですが、
06年10月時点で実に第14版、作品の息の長さが伺えます。
「ダンドリくん」「かっこいいスキヤキ」等、日常性の中に潜むおかしみを
ダンディズムを交えて語ってきた久住昌之氏と、
狩撫麻礼・メビウス・夢枕獏など錚々たる面々の原作を手がけてきた
職人・谷口ジロー氏の(一部漫画好きにとっての)夢の邂逅。
明確なオチやストーリーなどはありません。
盛り上がるでもなく、しかし決して退屈にもならず、
久住氏の重箱の隅を突くようなこだわりと谷口氏の超精密な絵でもって流れていきます。
それがもう、どうしようもなく、いい。こんな贅沢な漫画もそうそうありません。
ただし、「一家に一冊」という類の本ではないですね。
男がひっそりと独りで読むような、ある種の隠れ家的愉しさに満ちています。
男の本棚に、静かに一冊。
ドラマCD 「孤独のグルメ」
「孤独のグルメ」をラジオドラマ化なんて本当に出来るのか?と懐疑的でしたが、ラジオドラマ好きの私としては、星5つあっても足りない!星10個!さらに倍プッシュ!ここ十年でも、比較できる作品の無い傑作です。
・本編は、厳選した原作エピソード(といっても、原作もあまり話数はないのですが)を忠実に再現し、ことに、甘味処で仕方なく豆かんを頼んでみたら大当たりというあたりなどは、私としては最高の出来でした。ちょっと新幹線に乗って、谷中の天王寺さん近くの店で、あんみつと愛玉子食ってくる。と出かけたくなるほどです。
・おまけトラックがすごい。声優つながりで、はっきり言えば「24」のパロディなのですが、無駄にシナリオも演技も凝っています。もう40回は聴き直しました。ジャック風の主人公が、無駄に周囲を警戒し、しかももの凄い勘違い(少しぼかしますが、彼ら客は工作員!きっとそうだ!て感じです)をしながら、山谷の場末の定食屋でメシを食う!うまい!だが工作員をどう捌く!どうする!?て感じで、いくら聴いても飽きない。笑いも止まらない。このトラックだけのために3千円出したって惜しくない。ちなみに、やはり中の人つながりで、店の中で苦悩しながらコンテンダー(装甲車も打ち抜く銃)ぶっ放しそう(元ネタはFate/ZeroのラジオCDです)で、それも想像してしまいニヤニヤしました。
・騙されたと思って買ってください。面白くなかったら、この教会の丁稚、教会の威信をかけて全責任を負う!(いざとなればばっくれますけどね・笑)