復活*交響曲 第2番 ハ短調 [DVD]
素晴らしい演奏だと思いますが、最後の最後でカメラが指揮者や演奏者ではなく大聖堂の天井の方にパンしてしまい、なんとも気の抜けた終わり方です。画竜点睛を欠くとはこのことだと思います。残念!!
エディンバラ・埋められた魂
文章の雰囲気がとても美しい。
比喩・隠喩もいい。
ゲイの恋愛小説に分類されるが、全然いやらしくも下品でもない。
とても切ない気分に浸れる。
ここ10年で読んだ本でダントツNo.1。
Scientific Knowledge: A Sociological Analysis
今なお問題を孕みながらも今日のSTS分野全体の隆盛の起爆剤となったことは疑いもない「科学知識の社会学」(SSK)の創設母体「エディンバラ学派」。その理論的指導者B.バーンズとD.ブルアに科学史家J.ヘンリーを加えた三人の共著になる本書は、今日さまざまな立場が乱立する科学社会学の諸学派の主張の公平な紹介ではなく、あくまでSSKの元祖たる彼ら自身のアプローチの解説です。当時すでに旗色の悪くなってきていたエディンバラ学派の立場を「入門書」という形であらためて再説し勢力を盛り返そうというところか。
哲学的・認識論的主題に対して社会学的思考がもつ潜在力を強調する本書はむしろ「異端の科学哲学書」として読まれるべきかもしれない。私はもともとこの本が科学社会学事始だったこともあり印象深いものではあるのだが,今になって冷静に考えるにこの本は絶対に最初に読んではいけない本のような気がする。入門書としてはあまりにバランスを欠いている。“玄人向けの入門書”という奇妙な表現が一番ぴったりしてる。エディンバラ学派的思考を本格的に学ぶには最良のテキストのひとつだとは思いますが。
追記:読後4年目(2008)に思う。
4年前に科学論の勉強を開始したとき初めて読んだ本が同書であったことは案外に決定的なことだったのかもしれない。卵から出てきたひな鳥が初めて目にしたものを親と認識するのと似て、その後にラトゥールのScience in Action、そして一連のPublic Understanding of Scienceもの等に読み進んでも、結局、自分の中で変わらずシンパシーを感じ続け、コミットしたいと感じてもいる立場はやはりブルアやバーンズらの考え方だと感じるからだ。
彼らのいうcognitive interestの考え方はもう少しきちんと定式化しないとダメだと感じつつも、ブルアの数学の社会学もまだまだ洗練させないとダメだと感じつつも、やはりブルアとバーンズこそ科学知識を社会理論的に分析する果敢な試みの最重要の出発点であると思えるのだ。洞察のキレはラトゥールのほうが断然に優れていることは疑いもないのに。
結局、自分が哲学経由とはいえ社会学の大学院で何年間も訓練を受けたということは決定的な背景となっているのだろう。自分はクーンのいう範例としての社会理論パラダイムを骨身にしみるまで叩き込まれている。だからブルアやバーンズのように社会理論の硬派な伝統にあくまで忠実に科学知識の社会学的意味を考えていくやり方がストンと頭に落ちてくるわけなんだろう。ラトゥールは天才だと思うけれど、だからこそ社会理論の伝統にちっとも留意せずに考えを進めている感じはあるのです。もちろん洞察が見事なんだからそれでも全然いいんですけどね。
エディンバラ学派の良いところは、それがきわめて伝統主義で過激な点がないところ。「え?エディンバラのSSKって極左クーン主義とか言われた最過激派じゃなかったっけ?」と思われるかもしれませんが、それは伝統的な科学論からするとで、社会学的にはきわめてオーソドクスな考え方しかしていないのです。社会理論的にオーソドクスにやってここまで科学知識を論じられたのだからそれだけでもブルアとバーンズは社会学的思考の射程を押し広げることに大きく貢献したことだけは間違いない。読後4年目にそう思うようになりました。今なら☆四つを付けていいかと思います。
フィガロ ヴォヤージュ スコットランドで手仕事と出会う (FIGARO japon voyage)
クラシックな趣きのあるエディンバラに比べるとどうも退屈な工業都市、と言われていたグラスゴーが、モダンで魅力的な街として紹介されています。スコットランドの島めぐりの拠点としてだけではない、活気ある街に発展したのかも知れませんね。
表題になっている、スコットランドの「手仕事」ですが、アーガイル柄もタータンチェックのワンピースも、現地で探すより、銀座で買った方が、ずっと垢抜けて都会的なものが手に入るのは確実です。本誌でも、そういうふうに紹介されていますから、お買い物ガイドとしては、ここに載ってるもので日本で買えないものはほとんどないだろうとも思います。
ただし、現地の人々にとっては“おじいさん、おばあさんの制服”にほかならない、伝統のタータンチェックなり手編みのセーターなりが、現代的な都市生活にマッチしたかたちで甦っているのには感心します。外国人の斬新な発想こそが、こういう伝統的な手仕事を支えているのかも知れないとも思いました。
インターネットで簡単にホテル予約ができる時代ですが、個性的なプチホテル情報はやはりここがいちばんでしょうね。街で流行りのレストラン情報としては有益、かも知れませんが、基本的には簡素な暮らしをしている田舎なので、現地のサンドイッチがまずいとか、サーモンが生臭いとか、珍味ハギスは半分以上残してしまったとか、もう揚げポテトは見たくもない、とか、そういう文句を言いそうな人を“新鮮なローカルフード”でその気にさせてしまうのはどうかなあとも…。
しかし、レンタカーでこんな鄙びた田舎をドライブしてみたい、という方には、参考になる情報も多いのではないでしょうか。これ一冊でスコットランドが分かるわけではないので、他のガイドブックで基本情報をしっかり確認して下さいね。ここでは紹介されていませんが、スコットランドじたいの景観もなかなかのものなので。シングルモルトは…運転中はお控えいただくとしても。
スコットランドの島々というのは、イギリス人にとっては、南欧の有名リゾートよりよほどアクセスしづらい田舎なので、よく言えば全く俗化されていないのはほんとうでしょう。でも、そういう“オーガニック”で、“グリーン”な地方というのは、実際にはほんとうに不便で手間もかかり、行って見てもあまりすることもない、かも知れないことは覚悟した方がいいかも、です。家族連れでのんびり滞在するのには向いていると思いますが…
なお、スコットランドに関するCDや本、DVDなどの紹介ですが、これは在住者にも参考になると思います。“トレイン・スポッティング”は、現代イギリスの都市生活のなまなましい現実でもありますが、ロックやモダンアートの背景にある息ぐるしさとかエネルギーを感じるにもいいと思います。
こんなところまで日本の雑誌で紹介されてるんだなあ、と驚くのは相変わらずですが、在英邦人としては、日本国内のリゾート旅館情報、巻末のスリランカ特集もとても面白かったです。