映画で学ぶおしゃれな英語―「タイタニック」から「ミリオンダラー・ベイビー」まで
映画を観て泣いたり笑ったり、感性に新しい刺激を与えることは心の健康として必要だと思います。
また、日本語では表現できないネイティブな英語にはすてきな表現が隠されています。以前、映画館で観たときに俳優がしゃべっていたセリフが、この本を読んで“あぁ、そういうお洒落なことを言っていたのか!”と再発見させられ、ビデオやさんに走らされました。もちろん言語は英語で。
ただ私は白黒の古い映画も好きなので、著者の次の企画に期待します。
ミリオンダラー・ベイビー [DVD]
女性ボクサー、マギー、老トレーナー、フランキー、そして、雑役夫、スクラップの3人が織りなす極上の作品です。マギーがボクサーとして才能を開花させ、やがてタイトルマッチを迎えるまでは、いたってシンプルなストーリーですが、作品の世界に引き込まれました。
まず、モーガン・フリーマン演じるスクラップのナレーションが実に効果的ですね。このナレーションでアカデミー賞を受賞したのでしょうか。ヒラリー・スワンクは、役に成り切っていました。ボクサーと紹介されても違和感ないですね。
そして、イーストウッドは、随分、年を取ったものです。彼の若い頃を思い出すと、少し寂しい気もしますが、こんな素晴らしい作品を生み出すのですから、やはりタフですね。
タイトルマッチの結果は、実に悲しいものです。ここから、マギーとフランキーの求めていた、家族愛に収束し、ゲール語の「モ・クシュラ」という言葉に行き着きます。(意味は、作品の中でフランキーから直接聞いてください。)
エンターテイメントとしても傑作ですが、多くのことを考えさせられる見事な作品だと思います。
ミリオンダラー・ベイビー (ハヤカワ文庫NV)
短編集かよと軽くみてた。やっぱりスポーツなら、映像の躍動感でしょ?
破壊のインパクトなら劇画でしょ?小説というメディアに、これらに匹敵する
味が出せるのか?不安を抱きつつページをめくる。杞憂だった。
BOXingを題材とした作品は数あれど、この作品は新鮮だ。なぜなら今まで
スポットを浴びてこなかったドラマがここにあるから。敗者のその後や、女プロ
ボクサー、セコンド、興行師などリングの外にもドラマはある。著者は経験者
ならではのリアルで緻密な視点でそれらを暴き切った。ホント新鮮だった。
長い歴史と巨大な組織の下、BOXは洗練されたスポーツだと思ってた。しかし
本書を読み、考えが変わった。本場のBOXは格闘技だな。僕たちルールに従順な
日本人と違って。巨額がうごめく本場は、いつだってエキサイティングだ。
大衆性のある映画・漫画と違い、活字BOXも悪くないな。活字だからこそ冷酷な
現実が伝わる。なんだコノ感じ?このジワジワ感。格闘が地味に気持ちいい。
今夜もブリキハーツを揺さぶって止まない。
表題作の他セコンド達の心理戦を描いた「黒いユダヤ」。60&90年代の黒人
代表二人のキングを題材とした意欲作「ロープバーン」。短編6本中この3本
はKO必至の名作。ただ最後の悪役に偉大なジョーダンの名を騙らせたのは、胸クソ悪かった。
PS●ボクサーと差別なら→『ザ・ハリケーン (角川文庫)』●記録映画なら→『モハメド・アリ かけがえのない日々 [DVD]』
オリジナル・サウンドトラック「ミリオンダラー・ベイビー」
アカデミー賞作品賞をはじめ、主要4部門受賞で話題のこの映画。音楽までもクリント・イーストウッドが担当したことでも注目されているが、イーストウッドはこれまでも「許されざる者」や最近の自作のメインテーマはほとんど作曲していたが、“音楽:クリント・イーストウッド”という名義では初めてじゃないかな。盟友レニー・ニーハウスはコンポーザーとして参加しているはずし、息子のカイルくんも数曲、作曲・演奏に参加していて、イーストウッドをナイス・サポートしている。映画を観終わると、様々な名シーンとともに、メインテーマが耳から離れない。久しぶりのサントラ・リリースで、ファンの方々もお喜びでしょう。当然、ボクもその1人です! それにしても今年75歳、老いてなお進化し続けるイーストウッド御大、恐るべし!
ミリオンダラー・ベイビー 3-Disc アワード・エディション [DVD]
参りました。久々に相当な期待をもって映画を見に行きました。そして、まったくその期待を裏切られず、いえ、はるかに期待を超えて感動させられ、しばらく、人にどう話していいものやら分からないくらいでした。まず、クリント・イーストウッドがゲーリック語の勉強をするシーン。イエーツの詩を朗読するシーン。レモンパイを食べて、ため息をもらすシーン。肩を落として病院を去るシーン。モーガン・フリーマンの演じる親友に向かって悪態をつくシーン。どれもこれも、思い出すだけで涙が出ます。
ヒラリー・スワンクは「Boys Don't Cry」以来の体当たりの生き生きとした演技を見せ、こちらも素晴らしかったです。親の愛情に飢えた娘であり、人生に諦めをつけずに一途に努力する女の子であり、リングに上がると誰が何と言おうとKOだけしか考えない単細胞なファイターであり、人生の終わらせ方を知っている哲学者でもあります。
エンディング・タイトルを見ていて知ったのですが、音楽の担当もクリント・イーストウッド。DVDが出るのを待ちわびる他ないです。映像と文学と音楽と、彼がなぜこのような芸術家にまでなってしまったのか、興味が湧きます。ゲーリック語にも興味が湧きます。素晴らしい映画です。