マルドゥック・スクランブル 圧縮 [DVD]
まず私自身、原作未読ですのでその点をご了承ください。
さて全3部作の序章となる本作ですが、長い原作を上手くまとめていると思います。
世界観の説明やキャラクターたちの紹介など「序章」としての役割も十分果たしています。
原作者の沖方丁氏が脚本を手がけていることが大きいのでしょうか。
ただ、やはり駆け足な感は否めませんでした。
これは尺の関係もあるので仕方ないのですが、登場人物の心情をもっと深く掘り下げてほしかったかなと感じます。
また絵柄もかなり凝った作りになっていますがもう少しシンプルでも良かったのではないかと・・・(この辺は個人差ですが)
カッコイイのですが、ちょっと見にくい気がしました。
とはいえ、まだ1章ですし期待できる要素も大いにありました。
今後の展開で評価も変わるのでしょうが、現時点では良作と言っていいと思います。
天地明察
小説の書き方は自由である。
だが、歴史小説を書くときには、一定のルールがあると思われる。
骨は事実である。ただし事実だけでは小説にならない。
わからないところは作者の想像で埋める。
その想像が小説としての骨になる。
まず前者の骨に数々の誤謬があることは、ほかのレビュワーの指摘にあるとおりである。
後者の骨については、あまりにも現代的な解釈が施されすぎていると僕には思われる。
この時代の人が本当にそう行動したであろうか。
ただし、この作家の解釈については作家の自由であるから、好き嫌いの判断になるわけで、
僕の好みではないというだけである。
僕の好みではないのはもうひとつ、笑いのとり方が稚拙である点である。
「ほんとうにおもしろいこと」と「おもしろそうなこと」は違う。
作者は「おもしろそうなこと」を、「笑え」という命令記号とともに
書いているので少しも笑えないのである。
“「えん」という名を炎と言う字とは言えなかった”と書くが、
笑えない。
マルドゥック・ヴェロシティ 3 (ハヤカワ文庫JA)
マルドゥック・スクランブルの前日譚の最終巻。いよいよ、主人公、ディムズデイル・ボイルドの戦いが終わりを告げる。
カトル・カールとの戦い、仲間の裏切り、そしてさらにはウフコックとの別れ。マルドゥック・スクランブルにようやくつながる。
全編、血塗られた暴力に彩られているが、そこに潜む虚無感。単なるバイオレンスアクションではない。
第三作も出るようなので、期待したい。
それと、なぜかこの本は著者のサイン入り。お気に入りの一冊になりそう。
天地明察(1) (アフタヌーンKC)
冲方丁の傑作時代小説『天地明察』のコミック化の第1巻。アフタヌーンに連載されたのは知っていたけど、あえて読まず単行本化を待っていた。冲方丁の小説の方はかなり好きだが、このコミックも気に入った。
まだ第1巻だけど、展開はかなり原作に忠実なところがいい。再度、冲方丁の原作を読んでいるような気がした。また、それだけにはとどまらず、主人公、渋川春海を初めとした登場人物がいきいきと描かれているし、絵も上手いと思う。ただ、あまりのイケメンぶりにはちょっと違和感はあるが...
この第1巻では、春海が算額絵馬と出会い、関孝和のスゴさに驚嘆するところまで。小説では、これから面白くなっていくところではあるけれど、出だしとしては十分楽しめた。このままの調子で行けば、かなり面白いコミックになりそうだ。
コミックならではのところでは、小説ではよく分からなかった問題の解き方までコラムとして掲載されいて、数学音痴の私には助かった。これからが楽しみ。