バックマン・ブックス〈1〉バトルランナー (サンケイ文庫―海外ノベルス・シリーズ)
ぼくの趣味は小説を書くことです。
一冊ですけど、ライトノベルとして陽の目を見た作品もあったり。
そんで、「小説を書こう!」生まれて初めてそう思ったのは、この本を読み終わったときでした。
えーとですね、小説は主に3つの要素でできていると思うんです。
(1)設定…世界観や条件付けで読者を引き込み
(2)ストーリー…主人公の行動を通してページをめくらせ
(3)会話…イキイキとした会話でキャラクターに愛情を抱かせる
3つがバランスよくハイレベルでまとまったとき、
小説は驚異的な麻薬小説と化して、ぼくをトリップさせてくれるわけです。
そして、このバトルランナーはヘロインを脳髄に直接注入するかのような一本。
(1)設定…アメリカ全国民との鬼ごっこ、逃げ切れば1000億。つかまれば処刑。
(2)ストーリー…ピンチ!ピンチ!ピンチ!
(3)会話…俺のケツにキスしな!
なにこれ…しびれる!
もう(1)設定だけで、ごはん100杯いけますよ。
とにかく危機また危機。
もう息つくまもなくピンチが襲ってきます。
読み始めたら、ページをめくる手は止められません。
魅力的なガジェット、キャラ、小ストーリーが惜しげもなく振舞われます。
スティーブン・キングは年齢を経るごとに、より人間味溢れるキャラをぼくたちにプレゼントしてくれるようになりましたが、代わりにストーリー進行が極端に遅くなるというミソがあります。もちろん、深みのあるキャラたちによる小説も最高に素晴らしいと思います。ただ、ぼくは我慢強くないのです。
次は!このキャラは次にどうなるのか!それを知りたくてたまらないのです。
初期のキングは、すさまじい勢いでストーリーを進行させる、まさにぼくにとって理想の作家、そして、最初期の作品といえるバックマン名義の3本。
『死のロングウォーク』…人間ドラマ
『ハイスクール・パニック』…サスペンス
『バトルランナー』…アクション
この3本は、飛びぬけてストーリーがあらぶってます。
たしかに、微妙な矛盾点、おかしなところはあるにはあります。でも、そんなもの圧倒的ストーリーに比べれば、どうでもいいことなんです。
3本とも、よくある話ではあります。
もう、いまさら?ってくらいに。
つかまったら殺される鬼ごっこ?ああ、あったね〜。
生徒が学校で銃を乱射?ああ、あったね〜。
中学生同士の殺し合い?ああ、あったね〜。
…ち…が…う!
キングがこれらを書いたのは、30年?いやいや、もう40年、50年前の話ですよ。
現実がフィクションに追いついてしまった現代だからこそ、面白さがいっそう際立ってます。“ありきたり”の原型となった作品、発掘さればかりの原石、カットされたばかりの宝石なんです。手垢はついていないし、輝きは目がつぶれんばかりです。
最後の20ページなど、ぼくは半分過呼吸になりながら読んでました。
サイバーダイン社に乗り込んだダイソンみたいな感じで。
ひっひっふー、ひっひっふー。
カチッ…ちゅどおおおおおおおおおおおおん。
もはや、大人の事情があまりに多すぎて、再度の映画化、原作どおりの映画化は100%不可能でしょう。しかし、仮に映画化されたとしたら、確実に世界興行収入10億ドルは堅い!
今後、二度と現れることのない、至高のアクションエンターテイメント小説です。
スティーヴン・キング・コレクション
ヴァレースが権利を持つサントラからの選曲(日本版ライナーより)。私自身はE・ゴールデンサル「ペットセメタリー」目当てだったが、他にD・エルフマン「黙秘」カーペンター「クリスティーン」C・ヤング「ダーク・ハーフ」P・ドイル「ニードフル・・・」など。作家キングのファンが買うのかどうかは定かではないが、サントラ・ファンも楽しめる。
バトルランナー [DVD]
スティーブン・キングの原作が滅法面白く、シュワがこの役をやったらどう魅せるんだろうかと、興味津々でした。それが忘れもしない、当時テレ朝で放送してたショウビズで見た驚き。全米興行成績初登場一位、ということよりも、映画紹介で繰り広げられるプロレス的マンガチックさにです。でも本編を見れば、きっと管理社会の怖さを醸し出す内容に違いない!と気を取り直して、劇場にいきました。そしたら、全編プロレス的マンガでした。違うものとして考えれば、シュワ作品では面白い部類に入りますが。原作も読んでみてくださいね。
バックマン・ブックス〈1〉バトルランナー (扶桑社ミステリー)
1972年キングが描いた21世紀は、絶望の窒息地獄だった。2025年最大の
贅沢とは?安全な呼吸だった。いよいよ大気汚染は致命的となり。人々は
ノーズフィルターなしでは、たちまち喘息・肺疾患となり。「天気予報の次は、
本日の公害指数のお知らせ…」フリーテレビによる愚民化政策、プロパガンダ。
致命的な社会矛盾を前にマスコミはその機能を失い。無知蒙昧どもに
「殺人ショー」をタレ流す。大衆不満の矛先をそらす道化に成り下がる。
知恵の光・図書館は、日本の大学みたいIDカードで貧民しめだしだってさ。
放射能な工場員だった主人公も、400万人の失業者に仲間入り。このままじゃ
俺もヨメのポン引きに成り下っちまう。娘の薬代もママナラねえ。一攫千金TV
番組、デスレース「ランニングマン」しか望みはねぇ…背景物語も絶望的だが。
100→0章へ逆るカウントダウン章割が、より恐怖感を煽る。映画と違い原作
では、リミット30日間のマラソンレースだ。『逃亡者』リチャード・キンブルな
ノリか。まるで読者の自分まで、時効待ちの殺人犯になった気分。あと15年で
俺は偽名を捨て、病院も定職も手に入る。隣人を疑わず、ポリや警備員にビビら
なくて済むんだ。恐るべしキングマジック!
PS●もっとリアルにビビりたい人→1962『沈黙の春』/1996『奪われし未来』翔泳社
●同じ世界観をシュワちゃんで→『トータル・リコール』(ディック/マイノリティ・リポート収録