嫌われ松子の一生
この小説は、昭和40年代、高学歴で教師というお堅い職業に就き、
きっと周囲や本人も明るい未来を信じて疑わなかったであろう一人の女性の
転落人生についての物語です。
人から見れば愚かな女、ということになるかもしれませんが、
きっと松子は幼児期の体験により、人から愛されること・必要とされることを
渇望するようになっただけの、愛に飢えていたかわいそうな人なんだな、と思いました。
そして彼女の人生の終焉は、なんだかリアル過ぎて、居たたまれない気持ちになりました。
物語の内容からして読後感は決していいものではありませんが、
物語に入り込んで一気に読めてしまうし、そういう意味ではおすすめの一冊です。
パコと魔法の絵本 通常版 [DVD]
「MIDSUMMER CAROL ガマ王子VSザリガニ魔人」という舞台の映画化作品ですが、舞台とは違った魅力があります。CGを多く使いとっても楽しい映画になっています。かわいいパコにいつでも会えるようにDVDを購入しました。復刊ドットコムであの飛び出す絵本も注文しました。手に入ればDVDと共に私の宝物になります。
自虐の詩 プレミアム・エディション [DVD]
業田義家氏原作、4コマ漫画の映画化です。2007年上映。
4コマ漫画といういわば贅肉を極限にまで削ぎ落とした表現方法を「純文学」と喩えると、連続した映像と音声とで構成される映画は完全な「大衆娯楽」「エンターテイメント」です。このまったく性質も意味も異なる2つの表現方法を、相互に行き来することはドダイ無理というものだと個人的には思います。オリジナル作品の根底には一種のアナーキーともいえる不条理性が色濃く根底に流れていてそのうえで「究極の夫婦愛」を伝えていましたが、そうした要素を映画にコンバートするにあたって、笑いとギャグを交えながらわかりやすく変換させてあげる必要があるのだな、と改めて思いました。だからオリジナルとはまったく別の物として鑑賞すると、これはこれでけっこう楽しめます。そして、ついホロリとさせられます。最後に少し嬉しくなれます。たぶん、映画はそれでいいのだと思います。
主演の中谷美紀さんといい、阿部寛さんといい、脇を固める西田敏行さん、カルーセル麻紀さんといい、それぞれが持ち場ですばらしい演技を披露していますが、最後はお互いに支え合う「究極の夫婦愛」が伝わってきます。確か原作の舞台は東京だったと思いましたが、大阪の下町、しかも通天閣の近くの飛田へと移すことで、エンターテイメントの要素がほどよくブレンドされています。
繰り返しますが、この映画をオリジナルと比較することは、あまり意味がないと思います。映画は映画として十分楽しめます。それにしても、阿部寛は40代に入ってからドンドンよくなっていきますね。
嫌われ松子の一生 (上) (幻冬舎文庫)
中谷美紀主演でミュージカル仕立ての映画になったことにより、’03年に書かれた本書が、原作として一躍ブレイクした。
川尻松子の、23才の新任中学教師時代から53才で孤独な死を迎える、昭和45年から現在までの波乱の生涯を描いている。
この小説は、映画とは異なり、松子の存在すら知らなかった甥が、彼女の辿った人生を追跡してゆく章と、松子自身が実際の出来事を語る章とが交互に交錯して展開してゆく。彼がつかんだ事実から謎が広がり、それを松子の一人称が明らかにしてゆく。
さすがはミステリーの新人賞で世に出た著者ならではの、読み手の関心を先へ先へとどんどん進ませ、ページを繰る手を休ませない叙述スタイルである。
一般に本書は「転落の人生」、「男運のない女」、「流転の生涯」の物語として受け止められるのだろうが、私は読み終えてまた別の印象も受けた。
松子は、最初と最後の事件を除いて、情熱的で激情的な性格ゆえ、「今はこれしかない」、「思い込んだら命がけ」とばかりに、自ら過酷な状況に飛び込んで、いずれも裏目に出て幸せにはつながらないのだが、その時その時を精一杯生きたといえるのではないだろうか。
能天気で軽薄大学生だった甥は、はじめは興味本位だったが、次第に松子の人生の軌跡を追うことに没頭し、ついには裁判所の傍聴席で激情するまでになる。彼は単に松子の生涯の悲運に同情したのではなく、彼女の生き様の凄まじい迫力とか情念といったものに心を突き動かされたのだと思う。
本書では、松子の41才から50才までがわずか1ページで記されているだけだが、彼女は40代の10年間分をそれだけで済ませられるほど、それまでの20年弱を“激しく”、 “濃く”生きてきたのである。
嫌われ松子の一生 愛蔵版 [DVD]
中谷美紀が演じる松子は、子供時代からのトラウマで、「誰かに愛されたい、誰かから必要とされたい、誰かとつながっていたい」という気持ちを強く心の中に秘めながら生きています。
そして、いろいろな人と出会って、精一杯尽くして、でも、結果として逃げられたり、別れたりして、また一人になっていく。
その一つ一つの出会いは、観ている者に「今度こそ松子は幸せになれるのか???」と思わせないではない。笑える瞬間もあるし、幸せ一杯に見えることもある。
けれど僕たち観客は、「松子が殺害されてしまった現在」というオープニングを通過してしまっているのです。
あたりまえですが、僕たちは最後には松子が殺害されてしまうことを知りながら、彼女が迎えるひとつひとつの出会いを、素直な期待感のみと共に見守ることはできません。切なすぎる。
でも、だからこそ松子の不器用な、執拗な、男(愛する対象であり、自分を必要としてくれる他者)への執着がいとおしく、かわいく見えたりもする。
悲しい結末に向かって、それでも一生懸命生きている松子を、心の底から応援したくもなる。
是非、みなさんも機会が有れば観てみてくださいませ。
本当に良い作品でした。
もうひとつ。この映画で素敵な楽曲と歌い手さんに出会いました。
「What is a Life?」というタイトルの曲。歌っているのは、AIと及川リン(彼女のことは知りませんでした)。
AIも良いのですが、及川リンの声と歌い方が、とてもいいのです。
はかなく、カワイく、まるで松子の歌声のようです。実際映画の中では及川リンのパートは松子が歌っていました(当てレコですが)。
AIのパワフルなボーカルとの対比が、及川リンのはかない存在感を際だたせている感もありますが、DVDを観てしびれた僕は、すぐにiTunesMusicStoreで、及川リンの曲だけ即データ買い。 その日に40回は聴いていました。
アルバムが出たら是非聴いてみたいアーティストです。及川リン。