鴨川ホルモー(韓国本)
冗談というのは、大真面目な口調で言った方が面白い。爆笑はしなかったが、4箇所で思わず「ぐふふ」と笑ってしまった。サムシングって表現とか、チョンマゲのくだりとか。
縦軸のストーリーは、大学のサークルを舞台にした単純な大学生の片思いの交錯である。しかし、このサークルが思わせぶり。京都大学青龍会?しかもホルモーって何?たいした中身がなかったら勘弁しないぞっ(学生小説ってそういうのが多いから…)て息巻いていると、ナカナカどうして。古都京都の深遠さをうかがわせる大仕掛けが次第に明らかになる。
楽しませてもらいました。
鴨川ホルモー (角川文庫)
おそらくこの著者はスロースターターなのでしょう。前半は京都の歴史とかタイトルにある「ホルモー」の説明に終始して、少し退屈な印象を受けました。私は京都に住んだ経験があったので前半も面白く感じられる部分も多かったのですが…。
でも後半から面白くなってきます。というか急に勢いが出てくるのです。「青春」、「恋愛」、「友情」、「笑い」読んでいて心地よいキーワードが巧みに編みこまれていき、最後は綺麗にまとまります。読後感は爽快そのものでした。
でも間違っても感動を求めてはいけません。タイトルや表紙から想像できるようにこれは純粋な娯楽作品です。ハリウッドのB級映画を観る様な寛大な気持ちで読むことをお勧めします(笑)
鹿男あをによし (幻冬舎文庫)
私は奈良在住なものでよくわかるんですが、この小説、奈良県現地の描写が生々しいほど正確です。
違うっていったら、平城宮跡の隣りには女子校はないということぐらい。
私はドラマから入ったのですが、原作を読んだら、ドラマがいかに内容をはしょってるか、よくわかります。まぁ回数が限られてる分仕方ないことではあるけど…
何気ないような会話や場所のすべての場面が、物語終盤に向けての伏線になってて、最後の最後そのすべてを回収仕切ってるような、読んでる側を最後まで何度も驚かせる展開にはドキドキものでした。
読後、無性にきんなら(近鉄奈良)周辺と平城宮跡に繰り出したい衝動にかられました。
「あー、ここを鹿ちゃんと先生が歩いたんだなぁー。」みたいな。
半ばのどんでん返し以降は、ノンストップでぐいぐい引き寄せられるように読める、非常に巧みで面白い小説でした。
ただ、日本の古代史や伝承について全く無知という方には、この物語の面白さというか基軸は馴れないものであるかもしれません。
もしお読みになってから「設定がよくわからない。」と思われた方、
または、読むのを途中で断念してしまった方は、一度奈良を訪れて、寺社仏閣、遺跡や古墳を実際フィールドワークした後にもう一度読まれることをおすすめします。物語を何倍にでも堪能できると思いますよ。
プリンセス トヨトミ DVDスタンダード・エディション
政府から大阪に派遣された会計監査院の三人(堤真一、綾瀬はるか、岡田将生)が、監査のいっかんとして訪れたのが謎の組織「OJO」(大阪城を管理するとかいう名目の社団法人)。
ボロい建物の小さな組織で一見なんの問題もないように見えたが、調べているうちに考えられないような大阪の事実に直面する...といったお話。
小和田 哲男氏の「豊臣秀吉」を読んだ直後にこの映画を見たので、21世紀の太閤伝説について感慨深いものがあったが、大阪在住で大阪を何よりも愛する男として真っ先に感じたのが、大阪独立国家と言ってる割には、たかが会計監査院の副長(堤真一)相手になにやっとんねん、と。
仮にも江戸時代は日本一の商業都市、明治大正時代は世界のトップクラスの大都市が独立国家を名乗るのは別に100%ありえない話ではない。ただ独立国家になるということがどういう意味をなすかということについて少なくともこの映画作品(原作は読んでないから知らないが)はつめが甘すぎる。しかも、王女?君主政治にするつもり?太閤秀吉さんは王でも将軍でもなく関白です。
しかも秀吉は大阪の主ではなく全国制覇し朝鮮まで侵略した人物で、果たしてどれだけ大阪のことを愛していたかは疑問。それにしては大阪人は太閤秀吉さんがすきやねー。
秀吉軍の旗に使われた瓢箪で大阪の男たちが立ち上がり、どんな国になるのかなー、王女はどうなるんだろう?と思っていたら、なんか男と父親のつながりがテーマみたいになってきて、話の焦点がずれてくる。
だけれども、単なるコメディと割りきって見ればそれなりにおもしろいし、堤真一と中井貴一という今が旬の演技派のぶつかり合いも素晴らしいし、綾瀬はるかのボケ役もかわいい(関西弁ヘタクソやけど)から見て損はないです。
プリンセス・トヨトミ (文春文庫)
京都・奈良に続く著者の伝奇(!?)小説の舞台は大阪 。大阪という街が持つ歴史的背景を縦糸に、周囲との関係に悩む主人公的な少年(少女)と周りの友人・大人の繋がりを横糸に、荒唐無稽な「大阪の公然の秘密」を書き綴っていきます。
私自身、幼い頃から本作の舞台・空堀商店街とその周辺の雰囲気に馴染んできたこともあってか、読み進める内に、嘗て自分自身が経験したか、のような既視感を感じてしまいました。『鴨川〜』や『鹿男〜』の舞台ほどメジャーではないですが、この小説の舞台を読後、廻って見ることをお薦めします。
『坂を抱いている』商店街や路地(ろじではなく「ろうじ」)を造る長屋達、そして「女の子になりたい」と少年が願掛けをした榎木の巳(みい)さんの祠まで。実際に歩いた上で、改めてこの小説を紐解けば、より愉しめると思います(すみません、思いっきり私情一杯のレヴューになってしまいました)。