ロック誕生 THE MOVEMENT 70’S~ディレクターズ・カット [DVD]
「ロック誕生 THE MOVEMENT70'S」を観る。素晴らしいの一言。内容ですが文句なしの内容になっています。露払いのようなBSでの番組がありましたが、その番組よりも素晴らしい内容で感激してしまいました。ライブシーンなんかはダブっているところはありましたが、特にインタビューが素晴らしいのです。ミッキー・カーティスの「プロデュース論」、近田春夫の「コマーシャルとアングラのバランス感覚の話」遠藤賢司の「振り切れ感」等見所がたくさんでした。でもやはり、内田裕也のインタビューに尽きますね。特典映像のインタビューを見ると、その当時の「思い出」が「良い思い出」に変わりきれない感じが良いですね。愛憎入り乱れた彼の興奮は、そのまま70年代の熱気を現代に運んできてくれています。ロックで金儲けしてはいけない、というトラウマに囚われている裕也さんの熱い心に打たれました。金が目的でなく、自分の夢で突き動いてきたから、なにも怖いものが無かった、と当時を振り返る裕也さんをうらやましく感じたのでした。また史実としてのフラワートラベリンバンドの話や郡山ワンステップの話は興味深いものでした。
70年代の熱い時代を感じるだけでなく、ロックな「生き方」を教わった作品です。そしてそれは裕也さんの「ROCK'N ROLL」という言葉に集約されるのです。それを確認する為にも、ロック好きを自称する全員が必見の作品なのです。
ドキュメンタリー 頭脳警察 [DVD]
あの伝説的ロック・バンド『頭脳警察』。ロックが若者の反抗、社会批判を、過激で暴力的な表現で代弁していた昭和40年代半ば、PANTAとトシにより結成された彼らは、赤軍三部作といわれる「世界革命戦争宣言」「赤軍兵士の歌」「銃を取れ」の、赤軍派に触発された曲を演奏し、他の曲もラジカルな批評性の元に、日本語歌詞により独自の世界を作り上げ、ロックの中でも突出したバンドとして、圧倒的に支持されていた。彼らの演奏は世界に先駆けたパンク・ロックだったのだ。昭和40年代の終焉と共に解散したが、節目節目に再結成と解散(自爆)を繰り返している。
その『頭脳警察』のドキュメンタリー映画である。3部構成で、合計5時間15分もの大作だ。2006年から2008年まで、PANTAのバンド活動から頭脳警察の再始動に至るまで、彼らに密着して撮影されたものだ。先回りして言ってしまおう。この映画は頭脳警察が存在する時代のドキュメンタリーであり、再始動・頭脳警察のプロモーション・ビデオであり、頭脳警察・再始動のメイキング・ビデオである。そしてその背景には「戦争」という各々の時代の刻印が、はっきりと浮き彫りにされているのだ。
1部は結成から解散までの軌跡を、映像やインタビューを交えて纏めている。
2部は従軍看護婦として南方に派遣されていたPANTAの母親の軌跡。そして重信房子を介してのパレスチナ問題への関わりが中心となっている。優に二本分のドキュメンタリー映画が作れてしまう内容だ。
3部は各々のソロ活動から頭脳警察再始動に向かってゆくPANTAとトシ、そして白熱の京大西部講堂での再始動ライブへ。
ベトナム戦争から、赤軍派の世界革命戦争へのシンパシー。大東亜戦争当時、病院船氷川丸での母親の軌跡を、船舶運航記録によって、戦前戦後を通底する時間軸に己が存在する事を、PANTAが確認する辺りは圧巻である。そして中東戦争とパレスチナ。現在のイランなどに対する「対テロ戦争」という名の帝国主義戦争。なんとオイラと同じPANTAの世代は「戦争」の世代ではないか。
頭脳警察はその政治性によって語られる事が多い。しかし、本来はその存在や演奏自身がより政治的な意味合いを持っていたのだ。その事を自覚することにより、PANTAは「止まっているということと、変わらないということは、違うんだよ」と言うのだ。重信を通してパレスチナ問題に関わることを、落とし前を付ける、と言うのも、かつて赤軍三部作を歌い、赤軍派にシンパシーを感じた自分自身に対することなのだろうと思うのだ。
頭脳警察 1(ファースト)
リアルタイムで聴いたわけではないが、マニア間のテープ交換で手に入れたときには、とってもうれしかった。セカンドもそれなりにハードだけど、個人的には頭脳警察一押し。「やさしさ」と「危なさ」の、どちらを頭脳警察に求めるか?もし両方なら、相反する要素が最も自然に交じり合ったアルバムだと思います。
誕生
実のところ、頭脳警察は、このアルバムしか聴いたことがありません。 しかし、パンタという人物の存在感は、10代の頃の私に鮮烈に残りつづけました。 LP盤は見開き仕様でしたが、全面真っ黒なジャケットで、外側の面に白文字の歌詞が整然と並び、内側に本来のアルバムの表紙であるタイトルとバンド名が載っていました。 とにかく、既成概念に挑戦するという姿勢がジャケットからも伝わりました。 内容は、1曲目からギターの不協和音とともに始まりますが、パンタの反抗心を裏づけする歌詞とともに、いきなり聴く者を引き込みます。 個人的には、9曲目の旋律の美しさに心奪われ、ツゴイネルワイゼン的な芸術性と、文学的な暗さが、青春時代のおどろおどろした心情に見事合っていたのを思い出します。 のうてんきにラヴソングを歌っている気持ちじゃない時には、このアルバムは心に染み入ると思います。 他のアルバムを知らないので、今回は星4つにとりあえずしました。