中島敦全集〈2〉 (ちくま文庫)
1に引き続き、他文庫に収録されていない作品の魅力を述べたい。
まず、特に自意識をもてあます読者に。’過去帳’に分類された「かめれおん日記」を読めば、元気が出て、あるいは更に悩んで突き抜けられる。後に文学史に名を残す文豪でさえ、世に出る前は、表向き淡々と書いていても、内心こんなに鬱屈していたのだ。
「狼疾記」は「かめれおん日記」と主人公、背景は同じだが、読後感は爽やかだ。皆に馬鹿にされる事務員のM氏にも矜持があり、借り物でない哲学がある。それを見出し、尊重する主人公には柔らかな感性がある。主人公が久しぶりの酒で独りくだを巻くところでは、読者の憂さもさっぱり晴れる。「狼疾記」のみなら岩波文庫にもあるが、二作はセット。「かめれおん日記」の孤独と憂愁に会ってこその快感だろう。
他、どうも怪しいが、どこか愛嬌のある老人との交流を描いて、味のある’南島譚’の「鶏」もはずせない。
書簡Iは、はじめミステリアスでついそそられ、次いで作家未満の悲しみに打たれ、やがて南洋から家族を気遣い、「土民を愛する」姿にほのぼのとする。
書簡IIは、幼い息子たちに宛てた南洋からの葉書と手紙と集めたもので、作家没直後から児童書とする企画があったほどである。
尚、他文庫にも所収の「わが西遊記」が持つ興趣は、私が言うまでもない。
るるぶモルディブ (るるぶ情報版 A 16)
モルディブの数あるリゾートの中でも新しく豪華なリゾートを中心に、その他、自然志向のリゾート、海が綺麗なリゾートなどを取り上げている。
世界のホテル・チェーン(フォーシーズンズ、コンラッド、スターウッド、ココア、コンスタンス、タージ、シャングリ・ラ、バンヤンツリー、シックスセンシズ)がこぞって、モルディブにリゾートを開設しているという記事はおもしろく見た。
ジュメイラも進出したとか。写真を見ると、コンスタンスとか確かに美しいと思う。
ハネムーナーやカップルの旅行先の選定に役に立つと思うし、各ホテルのどのランクの部屋がお勧めかといった情報(各リゾートの「BestChoice」が載っている)を求めている人にも助けとなる情報があるだろう。
ただ、ビーチサイド・プールとかオーバーウォーター・プールとか確かにすごいと思うが、ちょっとやり過ぎではとも思う。
個人的には、モルディブはシュノーケリングが手軽に多様に楽しめる点で比類がないと思っており、その意味で、シュノーケリングに適しているか否か格付けしてあれば、自分的には、それだけで星5つという気持ち。
ハウスリーフの透明度や魚影のレベル、あるいは、ビーチからドロップオフまでの距離、潮の流れの強さ、フィンのレンタル料金など、シュノーケラーについての必須情報があまり掲載されているとはいえないのは残念。
「ハウスリーフのよい島」というやや漠然としたリストはP87にあり、アンガガ、ヴィヴァンタ・バイ・ダージ・コーラルリーフ、フィリテヨ・アイランド、ヴェリドゥなど23のリゾートが挙げられている。
また、ジンベイザメについてはダイブサイトが紹介されている(P82、アリ環礁最南端のマーミギリ周辺など)。
なお、おもしろいことに、ベビーシッター・サービスは高級リゾートほどある一方、「隠れ家ビラ」カテゴリーにはほとんどない。ベビーシッター・サービスの内実は、家族連れには気になるところだが、本書では詳細は分からない。