HEAVIER THAN HEAVEN―カート・コバーン・バイオグラフィー
圧倒的な情報収集と情熱に基づいて、淡々と語られた一冊。
純粋に一冊のノンフィクションBookとして見て、とてもクウォリティーが高く、優れた本だと思います。
カート・コバーンというとても稀有な人間に、チャールズ・R・クロスというこれまた稀有でとても優れた作家が交わって出来た、奇跡的な感じすらする一冊。
個人的にはこの本があって初めて、コバーン作品が本当に完成したんじゃないかと思えるくらいに強い本です。
この本を読んだ後で初めてNirvanaの音楽に耳を傾けてみる、という入り口も全然アリだと思います。
COBAIN UNSEEN カート・コバーン 知られざる素顔
同著者の伝記本、Heavier than heaven と基本とする内容は同じ。
ただこちらは大型本で、これまで公開されることの無かったとてもプライベートな写真(例えばコートニーの撮影したカートや、カートが撮影したフランシス)や、カートの描いた絵やコレクションなどをたくさん掲載した、Heavier than heaven の写真集バージョンといった感じのもの。
伝記本での、活字という媒体では伝えにくかったもの、カットせざるを得なかったものを写真という媒体の持つ長所を活かして多くの写真と共に伝えていく(活字も多く、写真集ではない)。
曲のタイトルにもなった、コートニーがプレゼントしたHeart-shaped boxやコレクションしていたTシャツ、人形など様々な写真が掲載され、それらの写真を中心にカートのパーソナルなエピソードが語られていく。
そして何と言ってもこの本の一番の特徴は、本の中の所々に組み込まれた仕掛け。
例えばTeen spiritの歌詞が書かれたノートの切れ端(ルーズリーフの紙を1枚本当にちぎったみたいに、ファイルを留める穴が破れている)や、ポラロイド写真(本物さながらで、裏面までポラロイド写真として再現されている)、カートのコレクションしていた お面(実際に顔に装着出来る様、ゴムまで付いている)などが、実物さながらに作り込まれて挟まれている。
全体的にとても凝った内容で、Heavier than heavenを読んで心揺さぶられ ”それでもまだ足りない” と感じるファンにとっては、前出書が奇跡的に優れたものであっただけに、まさに奇跡の一冊。
カートの持っていた独特の美学みたいなものが、写真で見るとまた違った形でよく伝わってくる。
With the lights out(レア音源+レア映像集)と、Heavier than heaven (徹底取材の伝記本)の中間といった位置づけ?
いずれにせよ間違いなく、ディープなファン向けのアイテムと言えると思います。
ただとても凝った作り方に、愛情みたいなものを感じられるので、ディープなカートファンにはとても満足出来る1冊となると思います。
(蛇足ですが、個人的にはWith the lights outにも同じ様な作り手の愛情を感じました。)
著者のCharles R. Crossは本当に優れたドキュメンタリー作家で、何か運命的なちからで、上手く生きられなかったカートの残された仕事を(伝えられるべき物語を伝える)やっているのではないか、などと彼の本を読んでいて思ってしまいました。
以下のサイトから、本の詳しい内容を確認出来ます。
http://www.barks.jp/news/?id=1000055097
ネヴァーマインド
これを聞いたのは、まだクラブ通いをしていた頃。
クラブのにいちゃんが、アナログレコードのこれを抱えて、最高です!といっていた。
空間を掻き回すようなギター、どっかで聞いたことのある、夢の中のようなつぶやき。
僕はこのアルバムの虜になりました。
毎日聞いていたので、必然的に毎日聞かされるはめになった家内の一言。
あれっ!これっておんなじグループなの?
そう、彼女は、このアルバムを、様々なアーティストによるオムニパスだと思っていたのです。
それだけ、このアルバムの曲は多様。変化に富んでいます。
このアルバムには、もうひとつ特徴があります。
それは歌詞。語っている主体、要は、歌っているカートの視点が、くるくるミラーボールのように、変化するのです。
たとえば、”Polly"。
拉致され、火あぶりされる女の子の歌なんですが、カートは、その女の子自身になったり、その事件に同情しているカート本人になったり、「やらせろよ。」と言う犯人たちになったり、くるくるくるくる視点が移動します。
また、”Breed"。
おそらく、カートの祖母のつぶやきが、基となっているだろう歌詞は、これまた、不思議と夢の中のつぶやきのように聞こえ、まったく現実感というものを失い、聞くものを、ホラー映画のワンシーンのような、独特の曲の世界に引き込んでいきます。
もちろん、Smell like・・・の、A mulado An albino A mosquito My libito、というリフレインは、妙に色っぽく、思春期の交錯した性衝動をおもいおこさせます。
そう、主体のはっきりしないカートの歌は、いか様にもとれ、聞くものを、ある種のデジャブー(既視感、どこかで体験したことのある光景)感覚に引き込むのです。
どこかで、聞いたことのあるつぶやき、夢の中の光景。
このまったく、現実感の伴わない感覚は、誰にでもある、記憶の中の光景、子供の頃の記憶を思い起こさせるのです。
”Something in the way"。
この曲を聴くたびに、僕は、どこか遠く、河原の草原に放り出され、飢えでひもじい思いをするカートと、いつのまにかいっしょになっているのです。
そう、これは聞けば、聴くほど、恐ろしい魔力をもったアルバムなのです。
カート・コバーン アバウト・ア・サン デラックス版 [DVD]
このインタビュー音声は、カートが唯一心を許した
ジャーナリストに語った心の内であると聞く。
とするなら、誤解のないようにファンに向けて語った
自身の正直な気持ちであるはず。
「俺は偶像崇拝されるのを拒否するよ。」
彼は、自分のことを神のように扱う人達に
心底うんざりしていたらしい。
彼の真摯な気持ちが彼自身の声で語られる、
人間、カートコバーンを知る事の出来る、
数少ない誠実な作品だと思う。
ラストデイズ [DVD]
予備知識なしで観たら意味不明・退屈でしかないと思います。
音楽は、さすがサーストン・ムーア(Sonic youth)、といった感じで良いです。
劇中に歌われるマイケルピット(主演)作の「Death to Birth」は詩・曲ともにかなり素晴らしいです。ギターは右手で弾いてるものの、カート本人を見ているようでした。
カートが好きなら、CDを聴くだけでなく、少しでも、彼自身の生い立ちから最期までを知ってから観てほしいです。
彼はなにもクスリをやっていたから亡くなってしまった訳ではないと知っていてほしいです。
この映画の意図は、はっきり言って読めませんが、何も考えずに作られた訳では無いはずです。(内容はどう見ても商業的な成功が見込めるものではありませんし。)
それについて制作側があれこれ語るのでは無く、観る側に考えさせるような作品です。
事実をもとに想像されたフィクション。
「現実に何があったのか」を明らかにしようとしたのではなく、抽象的に「人間そのもの」を描こうとしたのかも知れません。