深夜の告白 [DVD] FRT-118
コメディからサスペンスと対極のジャンルにも肌理の細かな面白さを同様に与えることのできた巨匠ビリー・ワイルダー監督のフィルム・ノワールです。
フレッド・マクマレー扮する保険勧誘員ウォルター・ネフの告白から映画は幕を開けますが、この告白が全編を通してそのままナレーションとなり、フラッシュバック形式で事の顛末が語られるあたり、ハードボイルドとしての絶妙な雰囲気がよく出ていて引き込まれます。後の傑作『過去を逃れて』の布石となったような作り方です。それもそのはず、脚本執筆にはハード・ボイルド小説の雄、レイモンド・チャンドラーが名を連ねています。
夫にかけた保険金をめぐってネフを巧みに誑かす悪女フィリスにフィルム・ノワール・アイコンのバーバラ・スタインウィックが扮し、美貌の中に冷酷さをちらつかせる“運命の女”を好演。彼女の専売特許である「人生に疲れた女」はここでも健在で、サスペンスの要としてうまく機能しています。サスペンスを盛り上げたもう一人の功労者はネフの老獪な上司バートン・キースを演じたエドワード・G・ロビンソンの存在でしょう。あろうことか部下のネフとフィリスが実行し隠し通す犯罪にたいして重箱の隅をつつくようなしつこい推理で迫ろうとします。このあたりロビンソンはねっちこい頭脳明晰さを巧みに表現します。また、キースが事件について疑いを持つものの、ネフ本人にはいささかも嫌疑をかけていないところが、“いつ、ばれるのか”といったスリル感を逆に増幅させています。そんなわけで観てるいるほうもはらはらしてしまいます。犯罪者に思わず味方してしまうのが不思議ですが、それほど物語の展開がうまく出来ています。
全体としては抑揚少なく淡々とした進行を見せますが、そこが逆にそこはかとないリアリティを生み出し、犯罪ドラマとして手に汗握る仕上がりとなっている、これはフィルム・ノワールの一つの形を生み出した歴史的名作。
世界名作映画全集 深夜の告白 [DVD]
白いバックに松葉杖をついた男のシルエット。男が杖をつきながらこちらに歩いてくる映像にのせてオープニングクレジット・・・冒頭からゾクっときます。深夜のオフィスで瀕死の重症を負いながら主人公ネフ(フレッド・マクマレイ)が事件の真相を告白する回想形式のストーリー展開。利己的で冷血で、にもかかわらず、
えも言えぬ魅力を湛えるバーバラ・スタンウィックのファム・ファタールぶり。成功したかと見えたところから一転してたどる破滅のプロセス。これこそフィルム・ノワール。名優エドワード・G・ロビンソンが演じる保健調査員キーズがまた素晴らしい。ネフとキーズが会うシーンはかならず”ハロー、キーズ”からはじまって、いつもタバコをくわえてから火のないことに気づくキーズにネフが火をつけてやって終わる。実はそれは伏線になっていて、ラストでは逆にキーズがネフに火をつけてやるんですね。紆余曲折の事件の末に、ラストでネフに火をつけてやるキーズの心情が胸にグッと染み込んできます。フィルム・ノワールは理屈ではなくムードで観るものですが、いかにもノワールらしい香しさを漂わせる傑作中の傑作。
深夜の告白【字幕版】 [VHS]
この映画は、主人公が、過去にさかのぼって語るという形式をとっています。
保険外交員の主人公は、顧客のディートリクソンの妻の誘惑に負けて、夫殺しに荷担してしまいます。
主人公は保険会社勤務ですので、普段は保険金目当ての事件などを見抜く立場にありました。
そのため、アリバイづくりなどは用意周到で、何もかもすべて完璧でした。
しかし疑り深い同僚のキーズにより、次第に計画がくるい始めます。
この妻というのが本当に恐ろしい!
特に主人公の後ろ姿を見つめるときの何かをたくらんでいる目。
夫が死んだら一緒に暮らせるなどと持ちかけ、
主人公は1度は拒否するものの、結局殺人を犯してしまうのです。
主人公を破滅させる、悪女とはまさにこのことです。
最後の最後まで目が離せない作品です。