小川の辺 【初回限定版】 [DVD]
篠原哲雄監督が「山桜」に続いて藤沢周平作品を映画化。
前作が純粋な悲恋物だっただけに、本作の複雑なプロットは監督の力量が問われる事になる。
藤沢周平の文学は厭世観に潜む人間愛だと私は思っている。
作品は多くを語らず、読み手の想像力の豊かさを求めてくる。
そう言った意味では映画化に適しているだろうと思うし、監督しだいで作品の良し悪しが決まると言っても過言では無いだろう。
本作は藩命により刺客とならざるを得なかった侍の苦悩を描いている。
対決の相手は侍の親友であり、その妻は自分の実の妹であった。
この原作を映画的に脚色すれば面白く描けるが、それでは藤沢文学で無くなってしまう。
原作を自己流の解釈で結論付けたがる監督が多い中、篠原監督が表現したのは映像である。
耽美的な映像の中に人生の価値と儚さが同居している事を見事に表現している。
フラッシュバックを適度に使用し、人的関係や背景説明を徐々に観客に理解させる構成も好感が持てる。
プロットから予測する刺激的な要素を極力排除し、淡々と描くスタイルはまさに藤沢周平の世界そのものである。
しかしスキャンダラスな展開を期待している人達からは、非難の嵐が巻き起こるであろう。
小川の辺 [DVD]
妹の嫁いだ相手は、自分の親友。
その親友が、正義感を貫いたため、脱藩します。
藩は剣客を立て上意討ちを命じますが、相手は相当な使い手。
遂に、その命が我が身に下ります。
親友と妹夫婦は、遥か遠く、行徳にいることはわかっています。
武士である以上、藩命に逆らうことはできませんが、せめてゆっくりと旅をしよう。
そして、妹の不在の時に、剣をあわせよう。
戌井朔之助は妹を慕う奉公人・新蔵を供に海坂藩を出発します。
藩という組織の不条理の中で、ほんの僅かな違いで追う側と追われる側に別れた者。
親友を討つ旅の途中で出会う自然の美しさ。
人は、哀しみと美しさの中に身を置き、それを断ちきって生きてゆかねばならないのでしょうか。
しがらみを断ち切り、作法を貫く武士を演じた東山紀之さんが見事でした。
菊地凜子さんも今まで見た彼女の中で最高でした。
隠し剣孤影抄 (文春文庫)
藤沢周平ファンとしては、たそがれ清兵衛に続き、鬼の爪が映画化されるのは嬉しい限りです。
本シリーズは主人公、またはそれに準じる者が秘剣を持っており、それを人生の節目で使います。しかしながら、その響きとは異なり、秘剣を使うことは必ずしも華々しいものではなありません。やむにやまれず使うこともあるし、最後に一矢報いるために使うなど。
主人公が派手な人間ではなく、地味な人が多く、剣が強いというのもそれほど大したメリットではないような社会で生きています。個人的には必死剣鳥刺し 女人剣さざ波の二つが非常に好きです。
蝉しぐれ (文春文庫)
日本の昔の男子は、これほどまでにりりしく、そして大人であったものかなのか、と思わせる作品です。
汚名をきせられ、罠にはまって切腹させられる父親。その父親の遺体をたった一人引き取りに出かけ、謀反者との罵声を浴びせられながらもひたすら歯を食いしばって車をひくまだ十代の文四郎。
互いに心を惹かれあっている幼馴染のお福との切ない別れ。
不動の固い友情で結ばれている3人の若者。
それらの一つ一つが感動させられます。
そして、大人になった文四郎は、殿様のお手がつき「お福様」となった福とともに、再びお家騒動に巻き込まれていきます。
このお家騒動の結末は?文四郎とお福は?
さわやかな、一陣の涼風が吹く、すばらしい傑作です。
たそがれ清兵衛 [VHS]
良かった!
シンプルなストーリーで話がつかみやすいうえに、親子愛あり、友情あり、
ほのかな恋心あり、アクションあり、人情あり・・・なにより見終わるとわかる
「儚さ」がたまりません。久々にいい映画を観た!という気分になれることうけあいです。
真田博之、宮沢りえ・・・etcの俳優たちの細かな演技に注目です。
表情からもセリフが伝わってくるようでした。